すでに台湾侵攻の予行演習は終わっている
こうして見ると、日本の防衛力強化は「牛歩」のようなものだ。ただ、台湾統一を目指す中国の習近平総書記も、今後1~2年は「牛歩」戦術をとらざるをえない。
台湾侵攻を想定したミサイル発射実験は、2022年8月、アメリカのペロシ下院議長(当時)が訪台した直後、台湾東北部海域(つまり与那国島などに近い海域)を含め、11発の「東風」ミサイルを発射することですでに予行演習を終えた。
当面は、ロシアとウクライナの戦争の行方、2024年1月の台湾総統選挙、同年11月のアメリカ大統領選挙の結果をじっくりと分析しながら、国内経済の建て直しに傾注すると考えられる。
また、最近で言えば、習近平総書記自ら、イランのライシ大統領と会談したり、外交トップの王毅政治局員をロシアのプーチン大統領と会談させたように、北朝鮮も含めた専制主義国家との関係をより強固なものにする期間にするだろう。
虎視眈々と軍事力強化を進める習近平
仮に、アメリカのマッカーシー下院議長が訪台するようなことがあったとしても、台湾総統選挙が終わるまでは前回のような派手な演習は自制し、水面下で軍事力の増強を進めると筆者は見る。図表1を見ていただきたい。
これを見れば、過去20年余りの間、中国がアメリカに比べどれだけ軍事力を増強させてきたかが一目でわかる。
KGB(ロシアの情報機関)出身のプーチン大統領とは異なり、習近平総書記は太子党(共産党幹部の子弟から成る派閥)出身のお坊ちゃんだ。負けられない戦いを前に無理はせず、図表1で示した戦力に、3隻目の空母「福建」や強襲揚陸艦などが加わり、北朝鮮も連動して動く環境が整ったとき、動き出すのではないだろうか。
当然のことながら、日本としてはそのときまでに「大きな穴」をできる限り小さくし、アメリカはもとより、韓国との連携も強化しておくことが不可欠になる。