アルバイトがバレたら推薦取り消しになる

虐待は母親からだけではない。父親からは言葉の暴力を受けてきた。

「小さいころに習いごともたくさん通いましたけど、“どうしてできないんだ”とか“バカ”とか色々言われ続けてきました。逆に弟は親からすごく可愛がられているので弟とも比較されるし、ほかの生徒とも比較されます。もうすぐ両親は離婚するみたいで、母は新しい男のところに弟を連れて出ていくんです。なので、一人暮らしをしなかったら、父と2人で暮らすことになります」

ユキちゃんは以前、メンタルの不調から体を壊して半年間入院していたこともあるという。そのため、一刻も早く家を出る必要性を感じアルバイトを始めようとしたが、ユキちゃんの通っている高校は進学校で私学ということもあり、アルバイトが禁止されているのだ。バレると推薦が取り消しになるという。

ユキちゃんは成瀬氏と会うたびにお小遣いとして3万円を受け取っている。知り合って3カ月だというが、すでに10回ほど顔を合わせているのでトータルで30万円。物件にもよるが初期費用くらいはまかなえていることになる。成瀬氏は「ユキちゃんは未成年なのでまだ体の関係は持っていないです」と話すが、高校を卒業したユキちゃんの処女を狙っているのは明らかだ。

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せめて学校が特別な事情を認めてくれれば…

「彼女はホステスの仕事に興味があるということなので、この間も私が知ってる六本木の女の子と同伴する時に事情を話して、ユキちゃんの勉強のために同席させてどういう感じなのか雰囲気を見てもらったりしたんですけど、最初は否定的だったママも、話すうちに全然やっていけるとなって。最初から銀座のホステスでいけそうだから、どうしてもってことなら紹介するからと言ってもらえたんです」という成瀬氏の言葉に、思わず耳を疑った。

未成年とパパ活をし、その未成年をインタビューの場に平気で同席させ、さらにはアルコールが提供される夜の店に同伴させているという、成瀬氏の常軌を逸したモラルのなさに思わず狼狽してしまった。

日向琴子『ルポ パパ活』(彩図社)

処女を「捨てる」か「捧げる」か、はたまた「売る」かで、その後の少女の人生は変わってしまう。ユキちゃんはおそらく、成瀬氏に処女を売ることになるのだろう。

家庭環境も深刻な問題だが、未成年のユキちゃんがパパ活に手を出したのは、そもそも学校がアルバイトを禁止しているからだ。ユキちゃん本人にも問題はあるかもしれないが、例えば学校がアルバイトを頭ごなしに禁止にするのではなく、推薦で進路が決まった場合や特別な事情がある場合だけでもアルバイトを認めていたら、ユキちゃんはパパ活をしなかったかもしれない。

大学合格が決まった11月から3月までの5カ月間、時給1000円のアルバイトをするだけでも引っ越し費用くらいは貯められたはずなのだ。

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