日常に浸透し始めた画像生成AI

この作品には、ドレス姿の婦人たちがいる大舞台に、神々しい光が差し込んでいる様子が描かれている。著者のような素人でも高い芸術性を感じる絵だし、AIが描いた絵だと言われても、にわかには信じられないクオリティである。

写真=Jason M. Allen/SWNS/アフロ
2022年8月、米国コロラド州で開催された美術品評会で優勝した、画像生成AIが生成した絵画「Theatre D'opera Spatial(宇宙のオペラ座)」。

優勝が決まった後、アレンはSNSへの投稿で、この作品がミッドジャーニーで生成したものであることを改めて明かした。AIが描いた絵画が優勝したことに対して、その創作力を褒め称える声もあれば、芸術に対する侮辱だと批判する声もあり、SNS上で賛否両論の議論が巻き起こった。中には、「これがAIの作品だと審査員が知っていたら、優勝することはありえなかっただろう」と指摘する者もいた。

後のインタビューでアレンは、「この行為が物議をかもすことはわかっていた」と発言している。そして、「いずれは、AIが制作した芸術を『AIアート』として、独自のカテゴリーを作ることになるだろう」と述べている。

チェスや将棋で人間を打ち負かしたAIが、とうとう絵画でも人間を超えてしまった。この一件は、「創造性こそが人間に唯一の特徴」だと思い込んでいた私たちに疑問を突きつけ、AIの想像力や、AIと人間の望ましい関係性について再考を迫られる出来事である。そして、ディープフェイクのツールとして、画像生成AIが日常に浸透し始めたことを暗示している。

私たちは、ディープフェイクの危険性と可能性を、もっと広い社会的文脈で捉える必要があるといえるだろう。

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