AIDによって生まれた子供たちが救いに

その寄る辺ない不安を軽減することに一役買ってくれたのが、同じくAIDによって生まれた子供たちだった。

大野和基『私の半分はどこから来たのか AID[非配偶者間人工授精]で生まれた子の苦悩』(朝日新聞出版)

「AIDで生まれたことを公表してからの5カ月間で、約20人の同じ境遇の人たちと会うことができました。彼らと話していて、『自分の中の半分が失われた』という感覚がどのようなものか、同じ経験を共有している人間でなければその本質は理解できないと痛感しています。彼らとはSNSを通じてお互いに助け合っています。AIDで生まれた者同士の交流は、まるで大家族で過ごしているような気持ちにさせてくれるし、精神的な支えにもなっている。もっと早く公表しておけばよかったと思うほどです」

アイデンティティは通常、10歳頃までに形成されると言われている。したがって、遺伝的背景を根こそぎ覆してしまうAIDなどの生殖補助医療技術による出生の告知は、アイデンティティが完全に形成される前に行われる場合と、形成後になされる場合とでは、まったく様相が異なってくるのである。

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