新興国投資で高いリターンは得られるか

こんなときにどこへ投資すべきか、慎重に考える必要があります。なかには、「高い経済成長が期待できる新興国に投資したほうがいいのではないか」と思う人もいるでしょう。金利の高くなった米国へお金が還流してしまうので、米国の高金利政策の副作用を最も強く受けてしまうのが新興国です。暴落するのであれば、ねらい目と見ることもできるかもしれません。しかし、有望な投資先を見極めるのは簡単ではありません。新興国の経済が長期的に高い成長を維持するには大きなハードルがあるからです。

たとえば、インドは人にも経済にも未開発の領域が多く、経済成長のポテンシャルが高い国の一つといえます。しかし、実際に経済が発展し、先進国の仲間入りができるかどうかは別問題です。

新興国が中進国になり先進国になるためには、一定の過程を歩みます。最初は人件費が安いメリットを生かして、先進国がノウハウを持ち込んで工場をつくります。その結果、雇用が増えて地元の人も豊かになります。

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日本にはできたが、いまの新興国には難しいこととは

しかし、経済が成長して徐々に物価が上昇していくと、賃金が上昇して先進国に追いつき始めます。結果、“賃金が安い”というメリットが薄れ、先進国がその国で商品を生産する意味はなくなってしまいます。

そのとき、新興国は自力で経済を支えていかなければなりません。自分たちで新しい商品やサービスを開発して、先進国に販売しなければ成長を維持できないのです。過去の日本にはそれができましたが、実際に新興国から先進国に移行できる国は非常に少ないのです。

なぜできないのか。それは「中所得国の罠」と呼ばれる社会現象に陥ってしまうからです。「中所得国の罠」とは、新興国が経済発展によって、一人当たりGDP(国内総生産)が中程度の水準(中所得)に達すると、発展パターンや戦略を転換できずに成長率が低下してしまうことを指します。