家のなかで少しでもいいから運動する習慣をつけたほうがいい

フレイル予防の3本柱は、栄養、運動、社会参加です。まず栄養に関しては、年をとったらメタボ予防よりフレイル予防、栄養状態がいいことが一番大事です。バランスのよい食事をとり、筋肉量を増やし・骨を強くすることを心がけましょう。

栄養が足りないと認知機能が低下し、物忘れをしたり、感情のコントロールができなくなったりもします。口腔ケアをすることで噛む力も鍛えられます。次に運動ですが、運動不足だと心肺機能が低下し、運動時に息切れが起こりやすくなります。また、運動をしないとおなかがすかないので粗食になり、栄養状態に影響してきます。それ以上に高齢者では、簡単に筋力が衰えていきます。

新型コロナの蔓延で外出が怖いと感じている方も多いと思います。しかし、人のいない時間にソーシャルディスタンスをとって、20~30分は歩きましょうねというのが医師からの提案です。テレビでは自粛の悪影響について報道されませんが、外で歩けないなら室内歩行練習。家で軽い運動をしたり、日を浴びないとセロトニンの分泌が減り、うつになりやすいので人けの少ない明け方に歩いたり、という工夫はできるはずです。

そして最後に社会活動です。ボランティア、趣味などで外に出て歩くことは筋トレにもなります。テレビからの情報を一方的に受けるのではなく、誰かと話し、一緒に食事をすることが精神の健康を維持するのです。

たんぱく質の摂取を意識しつつ、食べたいものを食べたほうがいい

こうした前提の上で、フレイルのチェックポイントである「体重の減少」という問題に向き合ってみましょう。

和田秀樹『テレビを捨てて健康長寿 ボケずに80歳の壁を越える方法』(ビジネス社)

よくある誤解は「体重が減る」イコール「脂肪だけが減っている」と思い込んでしまうことかもしれません。高齢者が過剰にダイエットをしてしまうと、脂肪だけでなく、筋肉まで落ちてしまいます。日本人は欧米人に比べて、そもそもタンパク質の摂取量が少ないので、さらにダイエットで摂取量を減らしてしまうと、脂肪よりも重い筋肉が次々に痩せていってしまいます。

そして筋肉量が少なくなると基礎代謝(運動しなくても消費するエネルギー)も落ちるので、さらに体重を落とそうとするなら、もっと食事を減らさねばなりません。そうなると、待っているのは栄養失調です。

見た目だけはほっそりモデル体形になるかもしれませんが、その「体重の減少」の内実は「筋力の低下」、それに付随する「歩行の異常」もセットになって、プレフレイルどころか、3ポイントで要介護状態手前のフレイルになりかねません。フレイルから要介護状態になると、運動も制限され、元には戻るのは難しくなります。運動しても、なかなか健康な状態にまでは戻れません。高齢になると1カ月寝こんでいたら歩けなくなりますので、足を「使い続ける」ことが大事なのです。

以上の観点から、高齢者に「食の節制」は効果よりも、害を受ける可能性のほうが高いと思います。高齢者は痩せよう、おなかをへこまそうなどと考える前に、タンパク質の摂取を意識しつつ、好きなものを好きなだけ食べてください。

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