武田氏は非主流派の二階派幹部で、麻生氏とは地元・福岡で犬猿の仲として知られる。その武田氏を取り込んでまで挙党体制を回復しようとしたが、踏み切れなかったという観測だ。

毎日新聞は岸田首相が年末年始に内閣改造を検討していると報じた。この狙いは秋葉氏ら疑惑閣僚を差し替えることに加え、離反しつつある党執行部も入れ替えて体制を引き締めることにある。さらには菅氏の副総理起用もあきらめていないのかもしれない。

しかし冒頭に述べたように、落ち目の首相が行う内閣改造・党役員人事はかえって内閣の余命を短くする。人事に着手しながら有力政治家に相次いで入閣を拒否されれば、政権は立ち往生し、そのまま内閣総辞職に追い込まれかねない。

ささやかれる「サミット花道論」と「ヤケクソ解散」

自民党閣僚経験者は「岸田首相が来年5月の広島サミットにこだわるほど足元をみられ『サミット花道論』が出てくる。そうなると政局は加速し『新年度予算が成立する3月まで』という声が出てくる。このピンチを切り抜けるにはもはや衆院解散しかないのだが……」と漏らす。ちまたでささやかれる「ヤケクソ解散」だ。

岸田文雄首相とバイデン米大統領(写真=内閣官房内閣広報室/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

内閣改造は首相の求心力を弱め、衆院解散は求心力を高めると言われる。しかしそれは衆院選に勝ってこそだ。いくら野党が弱いとはいえ、内閣支持率が続落して旧統一教会問題への世論の怒りが収まらない今のタイミングで衆院解散に踏み切ることができるだろうか。

閣僚3人を更迭するのも優柔不断で右往左往した姿をみると、自民党議員が猛反対するなかで一瞬にして衆院議員全員の首を切る「ヤケクソ解散」に踏み切る胆力と狂気を岸田首相が持ち合わせていると私には思えない。この首相はどこまでも凡庸なのだ。

そうなると岸田首相がこれからたどるのは、立憲とも決別し切れず、自民党内の顔色をうかがいながら恐る恐る内閣改造の時期を探り、結局は双方から挟み撃ちにあい続け、ますます衰弱していくという道ではないか。

悲願の広島サミットにたどり着けず、それを目前に新年度予算を成立させた来春の節目に息絶えるという惨めな末路を私は予想している。それを裏切り「ヤケクソ解散」を断行する勇姿を見てみたいものだ。

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