店への低評価レビューは「誹謗中傷」に当たるか

ここからは誹謗中傷についてよくある相談について見ていきましょう。

【Q1】オンラインショップでのレビューが商品の低評価で埋め尽くされてしまいました。作者への人格攻撃と見られるものもあります。

【A1】具体的にどのようなレビューが書かれているかにもよりますが、ショップや作者の社会的評価を低下させる内容で、意見・論評としての域を逸脱して人格攻撃に及んでいるものについては、名誉毀損が成立するでしょう。また、社会的評価を低下させるものではなくとも、作者に対する社会通念上許容される限度を超えた名誉感情侵害にあたる可能性もあります。

仮に、低評価のレビューを書きたくなるような経験をすることがあっても、実名で、直接、相手と面と向かったときでも言える言葉なのか、よく考えてから投稿するとよいでしょう。

写真=iStock.com/Sittipol Sukuna
※写真はイメージです

【Q2】画像投稿サイトに絵を投稿したら、Twitterでスクショつきで「見てこのヘタクソ」「描くのやめろ」「能ナシ発見」などと書かれました。

【A2】まず、イラストのスクリーンショットを投稿する行為は、複製権・公衆送信権の侵害にあたります。スクリーンショットがイラストの一部を切り取るものであれば、同一性保持権の侵害にもなるでしょう。

あとは、投稿の具体的な文言が問題になります。「ヘタクソ」といったイラストに対する評価については、意見・論評を逸脱した人格攻撃に及んでいないかが問題になりますし、イラストへの評価を離れた人格攻撃については、作者に対する社会通念上許容される限度を超えた名誉感情侵害にあたるかを検討することになります。

個人を特定できない場合は名誉毀損は成立しない

【Q3】昔あった友人との争いについてのマンガを投稿したらバズりました。もちろんフェイクを入れていたのですが、後日その友人当人のSNSに「これって私のこと? 知らない間に好き勝手に描かれたせいで、みんな私のことを批判する。名誉毀損で訴えようかな」と書かれていました。はっきり友人だとわかるようには描いてないし、大丈夫ですよね?

【A3】そこに描かれている内容が誰のことを指しているのか、社会的評価を低下させると言えるのか……一見して判断ができないことも少なくはありません。

これについては、「一般読者の普通の注意と読み方」で判断するのが判例通説です(最判昭和31年7月20日最高裁判所民事判例集10巻8号1059頁)。つまり、「普通、これを読んでもそういうふうには思わない」「普通の人が読んだらこれはあの人だとわかる」という、いわば常識的な感覚で判断します。

この基準に従って、まずは、誰のことを描いているかわかるかどうか(同定可能性)を検討します。

このような体験談マンガでは、わからない人にとってはもちろん誰のことかはわかりません。しかし一連の話を通じて「知っている人が普通の読み方をすれば、誰のことかわかる」という場合は、同定可能だと判断されます。

逆に誰のことかわかる人がいない場合には、同定可能性がなく、名誉毀損は成立しません。

同定可能だという場合、一般の読者が普通の注意と読み方をした場合に、読者の対象者に対する社会的評価を低下させるものであれば、名誉毀損にあたります。

逆に「普通はこれを読んでも、対象者に対する社会的評価は低下しない」という場合は、名誉毀損は成立しません。