再就職先を簡単に見つけられないのに解雇規制の緩和?
問題は、組織全体に迷惑をかけている人が解雇されたとして、その人が再就職先を簡単に見つけられるかどうかだ。現状、それは簡単にできるとは到底言えない。それにもかかわらず、流動化を促すには解雇規制の緩和が必要だと言っているわけである。
よく考えてみれば、人材を流動化するために、解雇を可能にすることは少し飛躍しているように思う。なぜなら解雇されて職を失えば生活が破綻する人が発生する可能性もあるからだ。
もちろん冒頭に紹介したツイッターやメタの社員のように高額の報酬を受け取っているITエンジニアは会社を辞めても再就職先にも困らないだろう。
医師も前出・筒井氏が「突然解雇されてもインターネットで『予防接種日給8万円』のようなアルバイトも探すことが可能であり、路頭に迷うことはそうそうない」と、述べているように、需要が高いITエンジニアや医師などは次の働き口が決まるという“流動化”が可能だろう。
もちろん新浪氏のような「プロ経営者」も引く手あまただろうし、彼の言う「失業なき労働移動」も可能になる。
しかし、世の中にはそういう人ばかりではない。
コロナ禍で「希望退職者募集」という名のリストラが吹き荒れ、2020年と21年で上場企業の2万人の社員が職場を去った。
その多くは中高年社員だが、コロナ禍で再就職先を見つけるのは困難を極める。「失業期間1年以上」の長期失業者は2020年に53万人だったが、21年は67万人に増えている(総務省統計局「労働力調査(詳細集計)」)。決して「失業なき労働移動」や流動化が実現できているわけではない。
仮にアメリカのように「解雇自由」にしたら、今以上に長期失業者が増えるのは間違いないだろう。