これは「男女平等思想」の勝利である
結論を言えば、国連女性機関が激しく批判されているのは、女性差別の発露やミソジニーが蔓延しているからではなく、本当の意味での男女平等がこの国に着実に浸透していることを端的に示している。
国連女性機関による「女性の人権のために『男らしさ』を見せてみろ」といわんばかりの、マッチョな男性性の発揮を期待するツイートに怒りの声をあげる男性たちは、しかしだからといって「ヒーッヒッヒッヒッ、女を差別してやるぜ~~~!」とか「俺から女を差別させる自由を奪うなッ!」などと主張している悪辣な差別主義者ではない。
そうではなくて、まさに国連女性機関やこれを支持するリベラリストが、メディアやSNSを通じて繰り返し行ってきた「啓蒙活動」を真摯に受けとって、原理原則的な男女平等を“フェア”に内面化してきた人びとである。
人権感覚のアップデートされた社会の正当なメンバーシップを得るために当然守るべき原理原則として男女平等やジェンダー平等といったアップデートされた規範を公正に遵守しているからこそ、国連女性機関の放ったジェンダー平等を謳いながらその実「男らしさ」を片務的に要求するようなツイートが、いまどきの男性たちにとっては「時代錯誤の性差別主義」に見えてしまったということである。
ようするに今回の国連女性機関の炎上は、カミングアウトの意味を理解していなかった花王が炎上してしまった一件(※1)と同じで、皮肉にも機関自身が「男女平等」「ジェンダー平等」の意味をただしく理解していなかったせいで起こってしまったということだ。
※1 朝日新聞デジタル「カミングアウトデー『便乗ツイート』後に謝罪相次ぐ 企業、自衛隊…」(2022年10月12日)