中国にとって「世界のトップ」は定位置

【橋爪】さて、キャッチアップ型なのか、そうじゃないのか。

キャッチアップの時期に、こうした中国のシステムは、高度に実力を発揮する。日本と似ているように見える。

日本は、キャッチアップが完了すると、足踏みになってしまった。中国はそうなるとは限らないと思う。どうしてか。中国は、2000年の歴史の中で半分ぐらいの期間、世界で最大の国で、最先端の国だった。トップを走ることには慣れていて、それが定位置だと思っている。そのトップの定位置で、創意工夫をする才能が続々出てくるかもしれない。

組織原理でいうと、日本はグループワークを重視して、仲間うちで突出するのは大変危険なんです。そこで、自分の力をセーブする。セーブしているうちに、自分に力があるということをだんだん意識しなくなる、フォロワーもリーダーも。

いっぽう中国の場合は、同僚よりも上役が大事。抜擢されることが、とても大事です。抜擢されるには、仲間よりも突出していないとダメなんです。だから、突出することに対するためらいがない。突出すると、むしろ生存可能性が高まる。生存戦略なんですね。

このマインドが2000年来ずっとあるから、科学者であれ、芸術家であれ、ビジネスマンであれ、誰であれ、中国の人びとは若い人も年配の人もとてもアグレッシヴで、ほかの人びとと違ったことをやろうやろうとしている。全体主義的で権威主義的なことと合わないように見えるんだけど、これがバイタリティーの根源です。

中国がアメリカを凌駕する未来は十分あり得る

科学技術はどうか。論文の数も学位の数も、日本よりずっと多い。R&D(リサーチ・アンド・ディベロップメント)の投資額を見ると、いまだいたい、日本の5倍ぐらいです。アメリカと同じか、追い抜く勢いです。

昔は、論文の本数を稼ぐために投稿してみました、みたいなゴミ論文が多くて、データを偽造したり、いろんな問題を起こした。そういうのがないわけではないが、アメリカで訓練を受けた研究者や中国で一流の学者が、一流の論文を書くというのがこれからじゃんじゃん増えていくと思う。

橋爪大三郎、大澤真幸『おどろきのウクライナ』(集英社新書)

いくつかの分野、たとえば量子通信衛星とか量子コンピュータとか核融合炉とか、そういう最先端の分野で西側と協力しないでそれなりの成果を出している。日本が追い越されている分野です。これは知的所有権がどうのとか、産業スパイがどうのとか、アメリカから拝借したのではなく、中国の独自技術だと思う。

この傾向を見るならば、中国は、自国の産業システムや科学技術を自力で更新していく可能性が高い。つまり、リーダーになれる。リーダーになった場合、もしデカップリングが起こると、14億人対残りの60億人、という比率になって不利だろうとは考えられるんだけれども、デカップリングがなければ、この14億人と共産党のパワーとが一体になれば、アメリカを優に凌駕するだけの実力を発揮する可能性は十分だと思います。

【大澤】なるほどね。中国人の伝統的な行動様式を考えると、キャッチアップしたところで成長が止まる、というようなことにはなりそうもない、ということですね。説得力があります。

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