8割が女性の会社で女性管理職は一人もいない

次第に窪田さんに、会社の内実が見えてくる。8割が女性という会社なのに入社当時、管理職には女性が一人もいない。女性が身につける装飾品なども数多く扱う企業でありながら、実際に牛耳るのは男性社員という、揺るぎない構図があった。

「大半が、お坊ちゃまなんです。それも、“鶏口牛後”の人たち。良家のボンボンで父親が社長だけど家業を嫌がったり、次男だったりして会社を継げない人が入ってくる。競争相手になる男性社員が少ない会社なら上に行けるからと。プライドだけはあるけど、仕事への熱量が低い、せこい考えの人が多かったですね」

女性が身につける商品の開発には女性の意見やアイデアを重用するという考えは、社内にはない。彼らの言い分はこうだ。

「財布は男が持っている。払うのは男だ」

窪田さんの口からため息が漏れる。それは長年、そういう男性を見てきたからだ。

「男の人は女というものを否定するためには、どんな小さいことでも見つけてきますから」

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「白馬の王子様を探しにきているんだから、邪魔しないで」

一方、お茶くみ廃止に過敏すぎるほどのアレルギーを示した女性社員の内実も見えた。

「デザイナーは募集をかけて面接をして採用しますが、他の社員はほとんどが顧客の娘。あるいは、有名企業の社長令嬢のお預かり。結婚するまでここで働いていたという、お見合いにはくをつけるための入社。実際、縁故を使って入っているのに、簡単に辞めますよ。生活するために就職する人がほとんどいなくて、私は例外的な存在でした」

だから女性たちから、窪田さんへのブーイングが起きたのだ。結婚する目的のためだけに就職した女性にとって、フェミニズム的行動はマイナスでしかない。目の上のたんこぶであり、邪魔でしかない。

「実際、ある先輩から『私は白馬の王子様を探しにきているんだから、邪魔しないで』と言われましたね」

同じ言葉を繰り返し浴び、窪田さんは悪いのは自分なのかと苦しくなっていったという。そんな時は社外の人間関係をつくることで、かろうじてバランスを取った。

「外国人が集まるコミュニティーで話を聞いてもらって、『それおかしいよ』って言われることで、やっぱり、私、おかしくないんだって思い返していました」