皇太子と「傍系の皇嗣」の違い

しかし見逃せないのは、秋篠宮邸の呼び方が“皇嗣御所”などではなく、もとの「秋篠宮邸」のまま何ら変更されないことだ。

また、皇太子が外出されることを正式には「行啓ぎようけい」と申し上げるのに対し、秋篠宮殿下の場合は、皇嗣になられてからも一般の皇族方と同じように、「お成り」と申し上げ続けている。

このあたり、“直系(天皇と親子関係の線でつながる系統)の皇嗣”で次の天皇になられることが確定している「皇太子」と、その時点の巡り合わせで皇位継承順位が第1位であるにとどまり、即位されることが必ずしも確定したお立場ではない“傍系(直系から分かれた別の系統)の皇嗣”について、宮内庁として区別する姿勢が見られる。

一般的な位置付けとして、天皇・皇后に男子がお生まれになれば、法制上、その瞬間に皇位継承順位が第2位に変更されて「皇嗣」でなくなる、というのが“不確定”な傍系の皇嗣のお立場だ。

また具体的な話としては、もし長年の懸案とされてきた皇室典範の改正が実現し、安定的な皇位継承を確保するために継承資格の「男系の男子」限定という、旧時代的な側室制度を前提としてこそ持続可能なルールが見直された場合、直系主義の原則によって秋篠宮殿下は皇嗣のお立場を離れられる。

その場合は、天皇陛下のお子様でいらっしゃる敬宮としのみや(愛子内親王)殿下が「皇嗣たる皇子」として、「皇太子」になられる(皇室典範の用語法では、「皇子」も「皇太子」も用語それ自体としては男女とも包含する)。

即位されない可能性が高い

そもそも秋篠宮殿下が将来、実際に即位されることは、普通に考えて想定しにくいはずだ。これはもちろん、資質とか能力について申し上げているのではない。シンプルにご年齢の問題だ。

天皇陛下は昭和35年(1960年)のお生まれだ。一方、秋篠宮殿下は昭和40年(1965年)にお生まれになっている。わずか5歳しかお年が違わない。よって、天皇陛下が上皇陛下と同じように85歳で退位された場合は、秋篠宮殿下はすでに80歳というご高齢に達しておられる。それから新しく天皇として即位されるという場面は、リアルには想像しにくいだろう。先ごろ、エリザベス女王の崩御ほうぎょをうけて英国史上“最高齢”で即位されたチャールズ3世でさえ、73歳だ。

しかしだからといって、天皇陛下がご壮健でいらっしゃるご年齢なのに、お年が近い秋篠宮殿下の即位のためという理由で、“前倒し”して退位されるわけにもいかない。

秋篠宮殿下のご即位は、決してあってはならない不測の事故でもない限り、現実的には考えにくい。秋篠宮殿下が即位されないという展開は、皇室典範第3条(皇位継承の順序の変更)の適用によって法的にも可能だ。

写真=iStock.com/BrendanHunter
※写真はイメージです