「聞く」ことは簡単なようで難しい

部下の本音を知るためには、上司はちゃんと「聞く」。しかし、聞くというのは、簡単なようで、大変難しいことです。

撮影=水野真澄

そもそも仏教の世界には、迷いから悟りのステージを、地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天上、声聞、縁覚、菩薩、仏と10層に分ける考え方があり、最初の6つが凡夫で、後ろの4つが聖者の世界。凡夫は6つの世界を、さまよい続けることから「六道輪廻」と呼ばれますが、その六道輪廻を抜け出せた、最初の領域が「声聞」です。「声を聞く」と書く声聞は、聖者という一つ大きなステージに上がる要となります。つまり、それぐらい人の話を聞くことは、簡単な境地ではないのです。

では、どうやって人の話を聞けばよいのか。3つのステップで考えていきましょう。

ステップ1:受け入れる気持ちを持つ

まず相手を受け入れる気持ちを持つこと。ただし自分自身に余裕がないと、相手の話を聞くことで、自分の感情が振り回されてしまいます。ふだんから自分の声はもちろん、自然界の声にまで耳を傾けられるぐらいの余裕を持つと、相手を受け入れる気持ちを持つことができるでしょう。

ステップ2:共に変わろうとする

人の話を聞き出すときには、君は何がしたいのか、君はこっちのほうがいいだろうとテクニカルに情報を引き出すのはよくないやり方です。相手の話を聞いたら、自分も共に変わっていこうという余地や余白を持つことが大切です。

そういった姿勢で聞いていると、その雰囲気は相手に伝わり、行動変容を起こさせるきっかけをつくることができるでしょう。

ステップ3:「心理的安全性」を与える

話を聞くときのコツは、相手に「心理的安全性」を与えること。部下はいきなり上司に呼び出されると、延々と説教をされるんじゃないかと警戒してしまいます。しかし最初に「今から10分、時間をもらってもいい?」とゴール設定を伝えれば、相手はとりあえず安心できるでしょう。

また10分後にどうなっていたいかまでメッセージを伝えられると、なおよいでしょう。部下にしてみれば、これから自分は何かダメ出しをされて、10分後にへこまされるのではないかと恐れているかもしれませんから「10分後には、1年前のようなよい状態になるために、ちょっと話して、視界がひらけるようになっていたいんだけど」などと伝えておく。すると部下は、ダメ出しされるかもと想像しながら聞かずにすみます。聞く姿勢も変わってきますよね。