画期的な店づくりを実現した5ステップ
それゆえ、現在の状況や今後自分たちが何をすべきかといった大まかな方向性だけを示すだけで十分で、あとはそれに意味付けし、説得力のある言葉で語りかけ納得してもらい、組織の足並みを揃えればよいのです。
ストーリー性によりメンバーは腹落ちすることで、「自分がやるべきことやできることは何か」を自発的に考え行動するようになります。主体的に行動して試行錯誤を重ねることで、納得できるストーリーが生まれるのです。そうなれば、そのストーリーに腹落ちしながらさらに前進していくことが可能となります。
スタバが実現したリージョナルランドマークストアは、これまでにない新たな店舗づくりであることから、センスメイキングにおける環境の分類では、3番目の「意図的な変化」に該当します。
新たな店舗づくりという意図的な環境変化に対するスタバのストーリーは、「①新たな店舗づくり→②スタバらしさを伴うことが条件→③これまでにない地域密着型のサードプレイスの模索→④文化財や伝統的な建築様式による建物を対象とする→⑤建物や外観を変更せずにスタバの存在感を示す店づくり」というものでした。
「だれもやっていない」という共通認識が結束を強める
このように、新たな店舗づくりという事象に対して、文化財や伝統的な建築様式による建物を用いて、スタバ独自の地域密着型のサードプレイスを創るという一連のストーリーは、過去にスタバが経験したことのない新たな取り組みでさまざまな障害を伴うことが予想されたものの、これまでどの企業や組織も成し得なかったことから、組織の共通の認識として足並みを揃えメンバーに意味付けするには十分なものでした。
スタバはさまざま障害を乗り越えて、リージョナルランドマークストアの第1号店として鎌倉御成町店をオープンするに至ります。今では全国で28店舗存在するまでになりましたが、一つひとつ店舗づくりが進む過程では、さまざまな成功体験が蓄積され生かされることになります。
それは、京都二寧坂ヤサカ茶屋店の例を見れば明らかです。メンバー全員で知恵やアイディアを出し合って、さまざまな工夫を凝らすことで障害を取り除いて実現に至るのです。
このように、企業や組織において、メンバー一人ひとりが大まかな方向性を共通の認識として持ち、それを信じて強い意志を持って進むことで、一見難しく不可能と思えることでも、実現することが可能となるのです。