売れ行きのいいスーパーは刺し身でも、立体的に食欲をそそるように盛り付けてあったのに対して、ハローデイでは切り身がトレイにへばりついているような状態だった。以後、加治は「見栄えよく陳列する」ことを心がけた。
あるとき、菓子売り場で困った顔をしているおばあちゃんを見つけた。「チョコパイが大好きだが、ひとり暮らしなので10個入り全部は食べきれない」という。翌日、加治は10個入りパックをバラした。そしてさまざまな菓子を5個程度にまとめ、ひと山200円で売り出したのである。菓子のバラ売りは客にウケ、おばあちゃんも大喜び。ハローデイが展開する「イチゴ食べ比べ」「ふぐ食べつくし」といったバラエティ商品のひな型は菓子のバラ売りセットだった。加治は好調の理由を冷静に分析している。
「店内と商品のディスプレーに凝るのは、従業員が楽しい気分になるから。今まで小売業は価格競争と効率化に邁進したため、従業員は疲弊し、売り場から笑顔がなくなりました。うちは価格競争はやりません。従業員に元気になってもらい、お客さまに楽しんでいただく。これはどこでもやろうと思えばできることです。ただ、効率を考えてやろうとしない」
(文中敬称略)
※すべて雑誌掲載当時