習慣化されたら「もの」から「言葉」へ

また、アンダーマイニング効果にも十分注意が必要です。

勉強が習慣化されているのにご褒美でモチベーションをアップさせようとすると、「もっと知りたい」「記憶することが楽しいからもっとやっていこう」という本当は持っていたはずの内面から湧いてくるモチベーションが損なわれてしまいます。

習慣化されてきていると思ったら、ものによるご褒美から、言葉で褒めるかたちに変えるタイミングです。

そのとき、褒める内容も、ポイントをちゃんと理解しておくことが重要です。ピグマリオン効果のところでも説明したように、ただ「頑張っていてえらいね」と言うだけでは逆効果にもなりえます。本人がどこを頑張っていたのかをきちんと理解し、そのポイントを褒めるようにしましょう。

(3)段階的に動機づけする

動機づけを考えるうえで「自律性」は重要な要素です。

動機づけにはいろいろなものがあります。「これができたら欲しかったゲームを買ってあげる」と約束したら頑張るという外から与えられるものを得ようとするモチベーションもあれば、ご褒美の逆で「勉強しないと叱られるからやる」というネガティブなことを避けるためのモチベーションもありますし、純粋に「楽しいからやる」というモチベーションもあります。

自分からやりたいと思う自律性がどれだけあるかでモチベーションの種類を整理できます。

モチベーションのはじめの段階として、「無動機づけ」があります。「特にやりたいと思わない」という状態です。

ここからひとつ上にあるのが「外的動機づけ」です。「やったらご褒美がもらえる」「やらないと叱られる」といったものが動機となるものです。

その次の段階が「取り入れ的動機づけ」と呼ばれるもので、「周囲に負けたくない」「友だちよりもできるようになりたい」「成績が悪いと恥ずかしい」といった周囲と比較することが動機となって行動するものです。

外的動機づけと比較すると自分の内部から出てくる動機ですが、周囲との比較なので、同じような成績の友だちや、勉強せずに一緒に遊んでいる友だちがいると「みんなと同じならいいや」と考え、動機づけが弱くなる可能性があります。

その次の段階の「同一化的動機づけ」は、「これをやるとよい高校、よい大学に行ける」「自分の将来のためになる」「夢を叶えるのに役立つ」といったことや、逆に「これをやらないと夢が叶わない」というように、行為と目的が同一化している状態です。

最後の段階が「内発的動機づけ」で、「新しい知識をつけることが楽しい」「そもそも好きだからやる」というように取り組むこと自体が目的となるものです。

出典=『記憶はスキル