不法投棄が行われるのは分譲地に限った話ではないが、恒常的に車両が行き交う車道より奥まった位置に開発される分譲地は死角が多い。そのためゴミを投棄していても人目につきにくく、発覚も遅れがちである。所有地に足を運ぶこともない地主自身は、ゴミを投棄されたことすら知らないままだ。

そのためか、分譲地で見られる不法投棄は、繰り返し続けられているとしか思えないケースもある。ただ通りすがりにゴミを投棄したというより、明らかに都合の良いゴミの投棄場所として標的になっているのだ。

道路を塞ぐゴミの山

ゴミの山で私道が完全に塞がれている場所も目にしたことがある。

例えば、千葉県茂原市弓渡の、家屋が1軒もないある放棄分譲地では、冷蔵庫などの生活家電の他、ベニヤ板などの建築資材、家具などが、人の背丈ほども積み上げられて路上に投棄されていた。

筆者撮影
明らかに継続的な投棄が繰り返されている。(千葉県茂原市弓渡)

大量のゴミは今や道路の半分以上を塞いでおり、車両の通行もできないありさまだ。それはどう見ても一般の乗用車で運び込める量ではなく、おそらく業者のしわざによるものと思われる。当然、このゴミの山の向こう側にある区画にも所有者は存在する。

私道上に廃車が放置されている事例も同様である。近隣住民によるものなのか、どこかから運び込まれたものかはわからないが、千葉県九十九里町作田や千葉県富里市十倉の分譲地では、私道上に、ナンバーが外された廃車が放置されていた。車は朽ちはじめ、おそらく移動も困難だろう。

筆者撮影
他者の空き区画前に放置されている車両。建物は空き家。(千葉県九十九里町作田)
筆者撮影
放置車両が道路を塞いでいる。(千葉県富里市十倉)

また、千葉県東金市滝沢の放棄分譲地を調査していた際、奥へ進んでいくと、なぜか唐突に道路が寸断され、突然小高い丘になっていた箇所があった。何者かによる残土の不法投棄によって私道と数区画が埋もれてしまっていたのだ。

すでに残土からは新たに竹の繁茂が始まっており、残土は周辺の地盤と一体化し、地形そのものが大きく変わってしまっている。しかし、そんな残土の中には、いまだ数区画分の個人の所有地が埋没しているはずである。

筆者撮影
不法投棄の残土で埋もれた私道。すでに竹が生えはじめているが、地中には今なお数区画の個人の所有地が埋もれている。(千葉県東金市滝沢)

私道上に小屋、崩壊するモラル

筆者がこれまで目にした事例で、最もひどいと思われるものは千葉県山武市板中新田の分譲地。共有部であるはずの私道上に、個人の小屋が建築されているケースだ。おそらく物置小屋として使用しているものと思われるが、周辺に隣家がなく、他に区画利用者がいないのをいいことに、敷地内ではなく、自宅の前面道路上に小屋を建てている。