しかし、二度にわたって書面で連絡を入れたにもかかわらず、筆者のもとにも、町役場にも、結局現在に至るまで一切の返答もないままだ。価格面で折り合いが付けば、土地の買い取りも考えているのであるが、返答がなければそれもかなわない。
土地を管理する気が一切なく放置を続ける一方で、手放す気もなく、連絡にも応じないというのは、では所有者は、一体何のつもりで所有を続けているのだろう。この分譲地の課税地目は「宅地」なので、更地でも年間5000円程度の固定資産税が掛かるはずなのだが。
住民にとっては迷惑極まりない
分譲地はあくまで私有地であり不可侵の財産なので、所有者本人はそれで良しと考えているのかもしれない。しかし、管理が行われない土地というものは、往々にして不適切な利用者を招いてしまうものだ。
特に限界分譲地の場合、不在地主が多いために監視の目が届きにくく、地域社会も分譲地の存在に無関心なために、その不適切な利用実態が、是正される機会もないまま放置されてしまう傾向にある。
最もよく見られる光景は、近隣住民による、菜園用地や駐車場としての占有・無断利用だ。言うまでもなくこれは不法行為にあたり、筆者もこの場でその行為を全面的に肯定するものではない。
ただ、これは当の住民ばかり責めることができない事情もある。草刈り業者も入れず、土地の所有者が姿も見せないような放棄区画は、繁茂を続ける雑草やツルが自宅の敷地や私道上に越境するばかりで、住民にとっては迷惑極まりない存在でしかないからだ。筆者の知人は、2019年の台風15号襲来時、暴風でなぎ倒された隣地の大木が自宅に激突し、外壁に穴を開けられてしまっている。
他者の土地を私物化するのは当然批判もあろうが、近隣住民は不在地主の使用人ではないのだから、草刈りだけの無償奉仕を強いられるいわれはない。冬場は未管理区画の枯れ草がボヤの発生源や延焼の原因にもなりかねない。自分の土地をまともに管理する意思がないのであれば、こちらで管理する他ない、との思いが住民にはある。
不法投棄のターゲットになる
筆者宅の隣地所有者のように、苦情に耳を貸すこともなく、近隣にいくら迷惑をかけても意に介さない所有者も存在する中で、杓子定規的な法解釈だけでは解決できない問題が発生していることも事実なのだ。
しかし、菜園や駐車場程度であれば、仮に所有者が現れてその無断利用を見咎めたとしても、復帰や明け渡しは容易なのでまだ良いのだが、これが不法投棄のターゲットともなればそうはいかない。
筆者はこれまで数多くの限界分譲地・放棄分譲地を訪ね歩いてきたが、特に辟易させられたのが不法投棄のゴミの多さであった。