配給通帳の配布や農産物の生産はすぐにはできない

危機への対応は、起きてからでは間に合わない。新型コロナが流行してから、政府は思いつきのように布マスクを生産・配布しようとしたが、タイミングを失し、利用されずに在庫として積み上がった。

配給通帳を印刷して全国民に配布するには、相当な時間がかかる。また、輸入が途絶してから、農産物の生産を始めても収穫できるのは遠い先である。タイミングが悪ければ、1年半くらい待たなければならない。他の用途に向けられている土地をすぐには農地に転換できない。法律上、政府が勝手に土地を取り上げることはできないし、機能上も、コンクリートで覆われたりガレキが埋まっていたりする土地は、物理的にも生物学的にも、農地として利用できない。

石油も輸入できないと、これまでのような農業は行えない。面積当たりの収量は大幅に減少する。国内で自給しようとすると、九州と四国を合わせた面積の農地を見つけてこなければならない。

危機を想定した周到な準備が必要なのである。防衛省は、軍事的な紛争が起きることを想定して、平時から武器弾薬の整備や兵の訓練を行っている。軍事的な紛争が起きるかもしれないし、起きないかもしれない。しかし、起きると大変な事態となるので、防衛省が必要である。

食料危機も同じである。そもそも、軍事的な紛争が起きると食料の輸入が途絶すると思われるのに、前者には対応する組織や手段があるのに後者への対応はなおざりにされている。日本を巻き込んだ軍事的な紛争が起きるときに、兵站は大丈夫なのだろうか?

「腹が減ってはいくさはできぬ」。それなのに、自民党国防族の幹部は防衛費を増額するよう要求する傍らで、米生産を減少させる減反をより強化すべきだと主張している。

豊かで健康な食生活は諦めるしかない

まず、輸入途絶という危機が起きたときに、国民が餓死しないために、どれだけの食料(特に、米、小麦などカロリーを供給する穀物)が必要なのだろうか?

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小麦も牛肉もチーズも輸入できない。トウモロコシや大麦も輸入できないので、日本の畜産は壊滅する。輸入物だけでなく、国産の畜産物、牛肉、豚肉、鶏肉、卵、牛乳・乳製品も食べられない。豊かで健康な食生活は、あきらめるしかない。

生き延びるために、最低限のカロリーを摂取できる程度の食生活を送るしかない。具体的には、米とイモ主体の終戦後の食生活に戻るしかないのだ。