保険営業という仕事のイメージを変えたい

この時期には上司の役割を学ぶと同時に、保険営業の仕事を続ける意義も見つけた。ある日、自分が営業所に誘ったメンバーの1人がうれしそうに「所長がこの仕事に誘ってくれたおかげで家計が助かり、息子にサッカーを続けさせることができた」と言ってくれた。

それまでも、お客さまの人生を支える仕事としてやりがいは感じていたが、女性がキャリアアップできる仕事であり、働く母親を応援できると気づいたことで山本さんの「やる気スイッチ」が入った。この仕事を、より多くの女性が楽しく働けるものにしたいと思うようになったのだ。

撮影=遠藤素子

だが当時、保険の営業職は偏った見方をされることもしばしばだった。短期間で辞めてしまう人も多く、そのことが保険営業の印象を悪くしているのではと感じていた。「この仕事や業界のイメージを変えたい」。この思いは、その後の全キャリアを通じて大きな支えになる。

悩んでいる部下をドライブに誘い出す

42歳のとき、営業所の皆と支部を立ち上げて支部長に就任。何をするにも「支部長はどうしたいですか」と聞かれるようになり、当初は自分の決断が、お客さまや部下の人生を左右するのだという責任感で身が震えた。「皆が乗っている支部という船を、泥舟じゃなくて豪華客船にしなきゃと一生懸命でした」と振り返る。

7年間の支部長時代を通して心がけたのは、人が辞めない組織づくり。職員が働き続けられる環境を整えることが、顧客の信頼や業界のイメージアップにつながると信じた。自分の後継となる支部長を育てることも自分の仕事だと感じたという。

「一人ひとりが自立自走できるよう、入社時にその人が大切にしていることや思い描く人生について、しっかり話を聞くようにしました。営業の世界はいいことばかりじゃないので、誰でも落ち込むことがあります。そんなときに励ませるように、職員それぞれの『やる気スイッチ』の把握に努めました」

悩んでいそうな部下を、3時間ほどドライブに連れ出したこともある。じっくり話すにはそれぐらいの時間が必要だろうという思いからで、この部下は帰る頃には「退職しようと思っていたけど残ります」と言ってくれた。