「なんとか用を足す」ものから格段に品質・機能が向上した

パンデミックの前には、基礎的な保健制度をいかに向上させるかビデオ会議で30分話しあいたいと政治家に頼むことなど思いもよらなかった。対面で会うよりも礼を欠くと思われただろうからだ。いまではビデオ会議を提案すると、みんなそのほうが実用的であると理解してオンラインで面会時間をとってくれる。デジタルの手段を一度知った人は、たいていそれを使いつづける。

パンデミックの初期には、多くの技術は「なんとか用を足す」程度のものだった。意図された目的のとおりに使われていたわけではなく、ときにうまくいかないこともあった。この2年間で、今後もデジタル・ツールが求められることがはっきりしたため、品質と機能がすさまじく向上した。こうした進歩をこの先もつづけるには、ハードウェアとソフトウェアをどちらもさらに改良しなければならない。

このデジタル化の新時代は、はじまったばかりだ。デジタル・ツールを使えば使うほど、その改良法についてフィードバックを得られる。それに、もっと創造的にそれを使って暮らしを向上させられるようにもなる。

テクノロジーは未来の暮らしをどう変えるか

僕の最初の著書『ビル・ゲイツ未来を語る』(西和彦訳、アスキー)は、ようするにパソコンとインターネットがどのように未来をかたちづくるのか、僕の考えをまとめた一冊だった。1995年に刊行され、予言がすべて当たったわけではないが(僕の考えでは、デジタル・エージェントはすでに人間のアシスタントとほとんど変わらないぐらい優秀になっているはずだった)、重要なことをいくつか的中させもした(いまはビデオ・オン・デマンドがあるし、ポケットに入るコンピュータもある)。

本書(『パンデミックなき未来へ 僕たちにできること』)はかなり性質が異なる一冊だ。しかし『ビル・ゲイツ未来を語る』とまさに同じで、根本的には、いかにイノベーションで大きな問題を解決できるかについての本である。それにテクノロジーが暮らしをどう変えるのかについて、僕の考えを一部でも分かちあいたかった。パンデミックのあいだに僕らはアプローチを見なおす必要があったので、この変化はさらに急速に起こるだろう。