夫と長男を失い次男が逮捕でも信者続ける母の「頭の中」

山上容疑者の母親も、自らの旧統一教会への入信が家庭崩壊のきっかけになり、息子が安倍元首相を銃弾で打った動機になったかもしれないことは、頭の中ではよくわかっていると思います。しかし、それでも信者をやめられない。

その理由は、教団をやめたら「事故や病気になり、不幸になる」「サタンの側になってしまい、地獄にいく」という恐怖心が大きいはずです。しかしそれだけではなく、教義を知ることで心が救われた実感を持っていることもあると考えられます。

筆者のいた旧統一教会では、これを「救われた実感」という呼び方をしていました。

これまで述べてきたように、旧統一教会の教えが入った人物に多額の献金をさせるか、させないかは上層部との会議のなかで決められて、そこでたてられたストーリーのなかで、本人に「救われた」という思い(救われた実感)を持たせて、お金を出させています。

入信も同じで「自分が選んで入った」のではなく、実際は「(教団側の言葉に)思いつかされて、その道を選ばされた」のですが、このことに気づくには、旧統一教会の内部事情を知り、信者時代の自分の行動を振り返る必要があり、容易ではありません。

自分の行動を振り返り……例えば、霊感商法の商品を買った際、自分から「買います」と言ったのはなぜか、と心の中を見つめ直し、実は「買います」と言わされていたという現実に気づけるか。自分の心に旧統一教会がくくりつけた偽りの糸を一つひとつ外していかなければなりません。

写真=iStock.com/SvetaZi
※写真はイメージです

信者にとってこうした作業はしんどいものです。なぜなら、長年信じていたものを手放すことは、これまでの自分の人生への否定にもなるからです。

容疑者の母親は20年以上の信者といわれています。当時の記憶をたどりながら、だまされていたという現実に気づくには、おそろしく長い時間がかかるでしょう。母親が今も、統一教会を信じ続けたい思いは、元信者としてはよくわかりますが、教え込まれたマインドコントロールを解くためには、絶対に向き合わなければならないことなのです。

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