カルトはあなたに明確な答えを与える

人生は決断と後悔の連続だが、何が後悔のない選択であるのかは誰一人わからない。別の道を歩んでいればと思うこともあるが、別の道を歩んだ結果を知ることもまたできない。真っ暗な道を手探りで歩いているようなものだ。そんなときに「正しさ」をつかみたい誘惑に私たちはとらわれる。明確で白黒ハッキリした説明に惹かれる。

瓜生崇『なぜ人はカルトに惹かれるのか――脱会支援の現場から』(法蔵館)

しかし人生で起こることはだいたい複雑に絡み合っていて、こうすれば必ずこうなる、という解決策が存在することは稀である。

その時々で必死に考えて試行錯誤しつつ、三歩進んで二歩戻るような歩みでしか現実は生きられない。しかし、複雑なものを複雑なままに受け入れることほど苦しいことはない。真面目な人ほど一度しかない人生に間違いのない真理や正義を見つけて、全力でそれに向かって進みたいという衝動を抑えることができない。

カルトは多くの場合、あなたが生きているのはこのためだ、という明確な答えを与える。

あなたの人生はこういう意味があるのだ、あなたの今まで生きてきたのはこの教えに遇うためだったのだ、そして、今後はここに向かって歩んだらいいのだ、と。こうした疑問に答えを与えることで、その疑問に向き合う苦しみや迷いを消し去ってくれる。「もう迷わなくていい」のだ。これを私は「真理への依存」とか「正しさへの依存」と名付けている。

しかし見かけ上消し去っているだけであって、解決しているわけではない。

「カルトの提供する答え」という目隠しをさせられているだけである。なので脱会して信者が元信者となり、いわば目隠しを外されたときに、何一つ問題が解決してないことに気づいて、深刻な空虚感や虚脱感に苦しむケースは多いのだ。

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