「どうして俺があいつの面倒を見ないといけないんだ」

話を聞くと、一人目の子供であるお兄さんは、両親から厳しくしつけられ、子供の頃から優秀だったそうです。やがて一流大学を卒業すると大手企業に就職し、現在は家庭を持っています。それに対して、二人目の子供である弟さんは、のんびりと教育され、自由に育ったようです。大学卒業後にバンド活動を続けたものの、ものにはならずやがて就職しました。しかし遅れて就職したハンディもあり、職場でうまくなじめずに、仕事を辞めてしまいました。そのまま就職もしないで、両親に依存した生活を続けています。

「親父もお袋も、大輔(仮名)には甘いから、こんなことになってしまったんだ!」お兄さんは両親に向かって怒鳴りだしてしまいました。

「こんなことになるとは思わなかったよ」お父様も怒鳴り返します。

「もう、やめて、こんなところで」とお母様。

「どうして俺があいつの面倒を見てやらないといけないんだ。俺の家族には一切影響が及ばないようにしてくれ!」お兄さんは止まりません。

「まあ、あくまで可能性の話ですので……」私の作ったシミュレーションで家族げんかが始まりそうになりましたので、私はなんとかなだめます。

どうやら、兄弟仲はかなり険悪なようです。話を聞くと、お兄さんは実家に帰ると、何かと弟さんに説教をしてしまうそうです。しっかりと自立して家庭を持っているお兄さんからすると、いまだに自立できていない弟さんは歯がゆいのでしょう。

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弟さんも決して現状に満足しているわけではなく、なんとかしたいと、自分自身と葛藤しているのだと思います。しかし、引け目を感じているお兄さんから小言を言われると、つい反発してしまうようです。弟さんの生活をめぐって口論になることはたびたびで、取っ組み合いのけんかをしたことも一度や二度ではないとのこと。最近ではお兄さん一家が実家に帰る時には、弟さんは外出してしまい、顔を合わせることもないそうです。