8割が「2枚目」に政党を書いている

参議院選挙では2枚の投票用紙を使って投票する。1枚目では選挙区の候補者に投票。2枚目は比例代表用で、政党か個人の名前のどちらかを書くことになっている。衆議院と違い、参議院の比例の議席は、それぞれの党の得票に応じて議席数が配分され、各党が決めた特定枠候補以外は、全国統一名簿の中から個人名での得票が多い候補者順に当選が決まる。

つまり、全国比例の名簿に名前が載ったとしても、よほど有名人だったり全国的な組織の支援を受けている人だったりしなければ、当選する確率は低い。個人名で名前を書いてもらわない限り、当選は難しいのだ。一方、業界団体に推されている候補者は、個人名を書いてもらえることが多いので当選の確率が高い。

しかし実際は、比例代表用の2枚目の投票用紙には、7割から8割の投票者が政党名を書いている。残り2~3割の投票用紙に書かれる個人名は、いわゆる組織票が多いため、自民党では、全国郵便局長会や日本医師会、建設業界、特定の宗教団体などが推す候補者、立憲民主党などの野党では、労働組合が推す候補者などが上位で当選している。

天野さんは、2枚目の投票用紙に個人名を書けることは知っていたが、7~8割が政党名を書いていることは知らなかったという。「これまで政党名を書いていた人たちが実情を知ったら、選挙結果を変えられると思ったんです」

「『2枚目』には政党名ではなく女性候補の名前を」

女性議員を増やしたいならば、2枚目の投票用紙に女性候補者の名前を書けばいい。天野さんはこの「2枚目」に着目し、ツイッター、インスタグラム、ティックトックなどのSNSを通じ、「#女性に投票チャレンジ」「#2枚目は女性」の2つのハッシュタグで投票を呼びかけ始めた。

もちろん、女性なら誰でもよいわけではない。そこで、比例の女性候補全員に3つの政策に関するアンケートを送った。1つ目は、選択的夫婦別姓の実現、2つ目は緊急避妊薬の薬局販売、3つ目は性交同意年齢の引き上げについてだ。そして、すべての政策に「賛成」と回答した候補者を、党派に関わらずSNSで紹介することにしたという。

「ターゲットは、20代から30代の若い世代です。『誰に投票したらいいかよくわからないから、とりあえず“自民党”と書く』みたいな人たちに対し、『いい候補者はたくさんいる』ということを紹介できたらと思っています」と天野さんは言う。

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