執行役を監督する取締役はバランスが重要だが…

株式会社とは株主が出した資金を元手に経営の執行役が事業を営み、稼ぎ出した利益を株主に還元する仕組みである。株主にとって執行役がちゃんと仕事をしているかを監督するのが取締役だ。

しかしごく最近まで日本では取締役と執行役が兼務しているケースが多く、いわば「プレーヤー」が「審判」を兼ねる企業が大半だった。そこに線を引き、プレーヤーと審判を区別しようというのが最近の流れである。

執行役が株主の負託に対して十分に応えているかを株主の代表である取締役が監督する。この仕組みを有効に機能させるために重要なのは取締役の構成だ。取締役のほとんどを執行役が兼務していれば、株主は軽視されがち。だから社内の生え抜きとは一線を画した人材が監督役を務めたほうが執行の暴走は食い止められそうだが、外部の人材ばかりで取締役を構成すれば社内の事情が分かっていない監督をしかねない。要するに取締役はバランスが重要なのだ。

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半数が「物言う株主」出身でいいのか

さて、東芝が選任を求めている社外取締役候補は2人とも東芝の株式を大量に保有する「物言う株主=アクティビスト」である。今井氏はファロラン・キャピタル・マネジメント、バンジー氏はエリオット・マネジメントのそれぞれ幹部だ。

一見、取締役は株主の代表だから、大株主の幹部が就くのは理にかなっているように見える。しかし東芝は2019年、アクティビストとの協議の結果、4人の社外取締役を受け入れている。今回の株主総会で新任候補2人が選ばれると、13人の取締役のうち実に6人がアクティビスト幹部もしくはその推薦を受けている人になる。

株主には多様な考えがある。それなのに、その代表である取締役の過半数近くが何かにつけて配当を増やせだの、社内に眠っているカネがあるのなら、それで自己株を消去し、株価を上げろと近視眼的な考え方をするアクティビストが占めて良いのか?――綿引氏が主張するのはそういうことだ。