「ロシアの生みの親」にプーチン氏は怒り心頭

ベラルーシは、独立以来、親ロシア派のアレクサンドル・ルカシェンコ氏が30年近く大統領を務めている。同国は1992年に発足したロシアと旧ソ連構成国のアルメニア、キルギス、カザフスタン、タジキスタンからなる軍事同盟「CSTO(集団安全保障条約機構)」の一員であり、1999年には両国の政治、経済、安全保障などを段階的に統合するロシア・ベラルーシ連合国家創設条約も締結するなど、ロシアとほぼ一体化していると言っていい。

一方、ウクライナの歴史を紐解くと、ロシアとの関わりはベラルーシよりも深いことがわかる。現在のウクライナの首都キーウは、9世紀から13世紀にかけて存在したキエフ大公国の首都だった。そして、ロシア人のほとんどが信仰しているロシア正教は、キエフ大公国の正教会から派生したと言われている。つまり、ロシアにとってウクライナは、親のような存在なのだ。

ウクライナはソ連からの独立後、ロシア寄りと欧米寄りの政権が交互に入れ替わりながら、ロシアを刺激しないように中立を保っていた。ところが、ゼレンスキー大統領は、「自分たちはEUにもNATOにも入る」と宣言してしまった。ロシアのプーチン大統領からすると「親子なのにどういうつもりだ」と、ゼレンスキー氏の態度に怒り心頭だったであろうことは想像に難くない。

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しかも、ウクライナがNATOに加盟した結果として、ロシアとの国境近くにミサイルが配備されると、モスクワまで約700キロメートルしかないのだ。

かつての勢力圏が西側にどんどん削り取られている

ロシアという国は広大な国土を持つ大国であるが、逆に言えば16もの国々と国境線を持ち、何度も侵略されてきた歴史を持つ。

有名なところでは、帝政ロシア時代の1812年に起こったナポレオンのロシア遠征、第二次世界大戦におけるナチスドイツの侵攻(独ソ戦)が挙げられる。第二次世界大戦でソ連は戦勝国であるにもかかわらず、敗戦国日本の死者数約300万人の9倍にあたる約2700万人もの死者を出している(※諸説あり)。ロシアでは、前者は「祖国戦争」、後者は「大祖国戦争」と呼ばれており、国土を脅かされることは極めてナーバスな問題なのである。

このような歴史的経緯もあり、ソ連は冷戦期に東欧諸国を支配下において、NATOとの緩衝地帯としてきた。しかし、冷戦が終結して、東欧諸国がEUやNATOに次々と加入したほか、かつてのソ連構成国も独立を果たした。ソ連を引き継いだロシアとしては、かつての勢力圏が西側にどんどん削り取られているという危機感があるのだ。