難聴になりにくいイヤホンはどれか

その結果、耳置き型とヘッドフォンは騒音環境において、安全な音量の上限である85dBを超えることがある一方、ノイズキャンセリング機能付きのものは安全音量の75dB以下に収まったという結果となった(インサート型=カナル型は多少音量を下げられるが、ノイズキャンセリング機能つきのものほどではなかった)。

この結果から分かることは、ノイズキャンセリング機能付きのものを選択することが、難聴リスクを下げることになるということだ。在宅ワークで大きな騒音に囲まれることは少ないと想定されるが、外出時等も含めれば、多少値が張ったとしてもノイズキャンセリング機能つきのものは選択肢に入れて考えるべきだろう。

ただし、イヤホン/ヘッドフォンは耳を塞ぐ必要があるため、音の問題だけでなく、上述のマスクと合わせて耳を痛める原因にもなる。そこで注目したいのが骨伝導イヤホンだ。その名の通り骨を通して音を聞く骨伝導だが、以下簡単にその仕組みを紹介しよう。

音を聞く原理は大まかに言って、音の振動が耳の鼓膜を通して聴覚神経に伝わるのが一般的であり、空気を振動させることから「気導音」と呼ばれている。一方、音の振動が直接頭蓋骨を伝わって聴覚神経に届く方法は「骨導音」と呼ばれる。

騒音下や水の中でも相手の声が届く

例えば、自分の耳を塞いで大声を出すと自分の声が聞こえるが、この時あなたは骨で音を聞いているのである(骨導音)。一方、自分の声を録音して聞いてみると、いつもより違和感を覚えることがないだろうか。これは、自分の声は通常、気導音と骨伝音の両方で聞いているのに対し、録音した声は気導音からのみ聞いているからであり、感じる音にギャップが生じるのである。

骨伝導技術は以前から知られており、2000年代前半には骨伝導技術を利用した携帯電話が発売されたこともあった。近年では開発が進み、さまざまな骨伝導イヤホンが市場に登場している。基本的にはこめかみに装着するので、耳を痛めるリスクが軽減されるほか、耳を塞がないため気導音も聞こえるという利点もある。

骨伝導の利点はさらに、建設現場等の騒音環境でも骨伝導マイクを通してコミュニケーションが可能になったり、水中でも音が聞こえたりするといった点が挙げられる。気になる読者は骨伝導方式のものをチェックしてみることをおすすめする。