共働き夫婦の遺族厚生年金は期待薄
共働きの夫婦の場合、夫が先に亡くなったときの遺族厚生年金はあまり期待できません。というのは、夫の遺族厚生年金の金額から、自分の厚生年金額を引いた金額が上乗せされることになるからです。
少しわかりにくいと思うので、65歳以上の共働き夫婦を例にとって説明します。
妻・C子さんは基礎年金6万円+厚生年金10万円=月額16万円
先ほど挙げた3つの式に当てはめると、
②夫の厚生年金の半分7万円+妻の厚生年金の半分5万円=12万円
③妻の厚生年金10万円
②の12万円がもっとも多い金額になりますので、遺族厚生年金は12万円になります。しかしC子さんの厚生年金が優先されますので、夫の遺族年金は2万円になるのです。内訳は次の通りです。
それまでは、夫婦の合計年金受給額は36万円でしたが、夫が亡くなると18万円になります。半分になってしまうということです。妻の厚生年金が夫の厚生年金より同じまたは多い場合には、遺族厚生年金は受け取れないということになりますね。
例に出したC子さんの月額18万円という金額は、一般的に見て多いのか少ないのかというのは、ちょっとイメージができませんね。総務省統計局の「家計調査(2019年)」の調査によると、高齢単身無職世帯の毎月の支出は約15万円です。
すると、平均の金額よりも3万円多いので、たぶん生活をする上では、困らないという予想ができます。ただ、二人の生活が一人になったからといって生活費も半分でOKというわけではありません。やはりそれなりに節約をしていく必要があるでしょう。
夫のほうが妻より高収入である場合の対策
では共働き夫婦は、どんな対策があるのでしょうか。C子さんの場合は、基礎年金だけをできるだけ繰下げ受給する方法があります。
遺族厚生年金の受給額に影響するのは、厚生年金だけです。基礎年金は関係ありませんから、基礎年金だけを増やせば、それだけ年金の受給額は増えることになります。繰下げ受給をすると年金は増額になります。1年繰り下げれば、8.4%の増額、70歳まで繰り下げることで42%の増額、75歳まで繰り下げると84%の増額になります。
C子さんの基礎年金は月額6万円ですので、もし75歳まで繰り下げるとしたら、月額11万円になります。自分の厚生年金と遺族厚生年金を合わせると23万円になります。かなり余裕のある暮らしになると思います。
年金は、基礎年金・厚生年金のどちらか一方だけ、またはその両方を繰下げ受給することができます。もちろん、基礎年金・厚生年金の両方を繰下げ受給して、年金額を増やす方法もいいと思います。
ただし、繰下げ受給して厚生年金が増額されると、その部分は優先されてしまい、夫の遺族基礎年金の受給額が減ってしまうということもあります。ちなみに遺族年金というのは非課税になりますが、厚生年金は課税の対象になります。
これは、ちょっと難しい問題です。というのは、平均寿命で考えると夫が先になくなる可能性は高いのですが、どちらが先に死ぬかというのはまったく予想がつきません。夫婦の健康状態、家計の資産状況などを考えて検討してみてください。