これまで求められていたのはデジタルの知見を持つ人材

現在のIT化の大きなテーマはやはり働き方改革を起点としたDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進です。DXと言うとすごそうな響きがありますが、実際はまだまだ黎明れいめい期であり、確立されたITツールやパッケージは存在せず、どのコンサルティングファームも試行錯誤しながらユースケースを作っている段階です。

つまり、トランスフォーメーション(企業の変革)をどの技術を使えばよいのか、どのITツールを使えばよいのかを探っている段階です。

この段階においては、デジタルのバックグラウンドを持った人材による技術やITツールのソリューション選定や、クライアントのやりたいことをテクノロジーでどこまで実現できるのかといった話をするための目利きができることが非常に大切です。そのため、単なる技術者ではなく、確かなデジタルに対する知見や、最新のテクノロジーやビジネスに対しての興味が強い人材が求められています。

ここまで、デジタルの波によってコンサルティングファームの支援領域がピュア戦略から、最新テクノロジーの活用や経営体質の改善へと広がり、デジタル人材への需要が大きくなったとお伝えしました。

それでは、DX以前のデジタル人材への需要と、これからのデジタル人材への需要は何か変わるのでしょうか。

この問いに答えるためには、今までのIT化とDXの違いを確認する必要があります。

ネットフリックスはDVDレンタル→動画見放題で大成功

まず、今までのIT化は「業務の効率化やコア・コンピタンスの強化をデジタルによって実現する」ことに主眼が置かれてきました。支援するコンサルタントには、デジタルの知見をベースに、業界や業務に関する知識が求められてきました。

ERPシステムやSFAパッケージの導入、もしくはそれらのクラウド化などはIT化の好例です。

その一方で、DXは「ビジネスモデルそのものをデジタルの力によって変革(トランスフォーメーション)」することが目的です。その目的においては、コンサルタントには、デジタルの知見に加えて、(業界や業務に関する知識よりも)企業を真の意味で変革することが求められます。

例えば、ネットフリックスはDVDの配送レンタルで成功した企業ですが、現在はインターネットを通じて動画見放題を提供するというサブスクリプションモデルにトランスフォームしています。

写真=iStock.com/Christopher Ames
※写真はイメージです

このような事例もあるものの大局的には、今はまだDXの黎明期ですのでデジタルの知見が重視されます。しかし、DXにおいてもITツールのパッケージ化が進み、5年後、10年後には誰でも扱えるようになるとデジタルの知見の重要度は下がります。また、コンサルタントがある程度のデジタルの知見を持っていることも当たり前になっていくと予想されます。

そうなると、デジタル知見よりも、いかに変革する力をもっているかが一人ひとりのコンサルタントに問われるようになると予想されます。

もちろん、すべてのDXがパッケージ化・定型化されるわけではなく、経営に近い部分を中心にスクラッチ開発や大きなカスタマイズが発生するはずですので、デジタルの知見が重視される領域は残りますが、大きな流れとしてはデジタル人材からトランスフォーメーション人材へ需要がシフトしていくでしょう。