記事は、ウクライナ発表の数字が多少誇張されている可能性があるとしたうえで、それでも「プーチンは1904〜05年に日本がロシア帝国の2艦を沈めて以来の、最悪の敗北に直面している」とみる。続けて「この敗北は数年後になって、あわや旧帝国を転覆させようかという革命の引き金となるところであった」とも述べ、こちらもロシア革命との関連を論じている。

ガブリエル氏はまた、ウクライナ侵攻により近隣国が相次いでNATO加盟の意思をみせている事態を受け、ロシアはウクライナ侵攻の成否とは別に、実質的な敗北を喫したとみる。「しかし彼(プーチン)は、すでに本当の敵との戦いに負けたのだ。その敵とは、北大西洋条約機構(NATO)である」。

直近で加盟の意向をみせたフィンランドは、国民人口550万人に対し予備兵100万人と、人口あたりでヨーロッパ有数の規模の軍隊を保有する。ロシアを刺激することを避け中立姿勢を貫いてきたフィンランドまでを、明確にNATO側に回す事態となった。

国民生活、秋口までに限界か

投入した侵略軍の3分の1の兵力をすでに失ったとされるロシアだが、国内に目を向ければ時を経るごとに西側の経済制裁は厳しさを増している。辛抱強い国民とて、不満の噴出は時間の問題だ。

潮目が変わる時期としてクジオ氏は、今夏の終わりごろを見込む。この時期までに禁輸品目の代替品の調達が厳しくなり、かつ一般家庭の貯蓄が底をつきはじめるためだ。

ロシアでは禁輸によるチップ不足を受け、同国最大の自動車ブランドであるラーダが休業に追い込まれた。戦車製造の2社も同じ理由で操業を停止しており、経済への打撃は大きい。

以降、国内経済への影響は一層深刻なものとなり、失業率は上昇を続けるだろう。「今後数カ月のあいだにプーチンの苦境はさらに悪化するとみられ、彼自身が進めるウクライナ侵攻は輪をかけて継続不可能となるであろう」と同氏は述べる。

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こうなれば、欠けた兵力を補充し一気に片を付けたいところだが、ロシア軍には十分な予備兵がいない。徴兵を行おうにも、侵攻前にはウクライナの大多数の国民が「解放」を歓迎するだろうと述べていた手前、徴兵に動けば苦戦を認めることになる。プーチンの打てる手は一つまた一つと失われていっている状況だ。