レバレッジ型投資信託の落とし穴

それにレバレッジ型ファンドには大きな落とし穴があります。仮に買ってから、ほとんど下がることなく上昇を続けていけば確かに上昇幅の2倍とかのリターンがありますが、上昇と下落を繰り返すと必ずしもその通りにはならないからです。

この理由はレバレッジ型投信の仕組みにあります。一般的にレバレッジ投信は、2倍、3倍のリターンを得られるようにするために先物取引を使っています。その際、対象となる指数の1日単位の値動きに対して2倍とか3倍といった倍率を掛けた騰落率となることを目指しています。これによってどういうことが起きるかを考えてみましょう。

わかりやすくするために極端な例で考えてみます。例えば100で買ったものが翌日80に値下がりしたとします。さらにその翌日には100に戻した場合、±は0となりますが、レバレッジ投信の場合は0にならず、マイナスとなります。100が80になると20%下落しますが、2倍のレバレッジをかけているため、投信の下落幅は-40となり、価格は60になります。翌日に指数の80が100になるということは25%上昇しますから2倍の50%となりますが、60が50%上昇するので90となり、100には届きません。

事実、ナスダックは年初から上下動を繰り返しながら28%下落していますが、同指数を対象とするレバレッジ型投信の場合、価格下落率は約50%となっていますから半値になっています。

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挽回できないという痛手

さらにレバレッジ型投信で起こり得る問題は基準価額が0円、すなわち価値が全くなくなってしまうということが理論上は起こり得るということです。普通の株式型投資信託の場合、組み入れている企業が全て倒産してゼロにならない限り、基準価額がゼロになることはありません。つまり、単にナスダック市場に連動する普通の投資信託であれば、ナスダックに上場している銘柄が全部倒産しない限り、ゼロにはならないのです。

ところがレバレッジ型の場合、指数であるナスダックがゼロにならなくても暴落が続いて50%下落すれば、下落幅も2倍以上となりますから、理論上はゼロになることもあり得るのです。ただ、現実にはそうなる前に恐らく「繰上償還」をすることになるでしょう。

「繰上償還」というのは、環境の変化で運用の継続が困難になったと判断された場合、運用会社がファンドの運用を停止してしまう措置です。通常、株式や投資信託への投資においては、値段が下がったとしてもそのまま持ち続ければ再び上昇することもあり得ますが、投資信託で繰上償還がおこなわれるとその時点で運用はできなくなります。

これが単に普通の投資信託であまり人気がなく、残高が少ないために繰上償還になったのであれば、いくらかでも利益の出ている可能性はあります。しかしレバレッジ型は多くの場合、価格が大幅に下落したことで繰上償還になると考えられますから、大きな損失が確定し、しかもその後運用ができないので、挽回することもできません。