政治活動に使うカレンダー代金8億円を日本郵便が支出していた

疑惑のポイントは、参院選の得票につなげる目的が明白であるカレンダー配布が、じつは日本郵便が支出した億単位の経費でまかなわれていたことだ。

以前は局長会側の負担でカレンダーを作成していた例もある。それが前回参院選を翌年に控えた2018年8月、日本郵便会長(当時)の仲介により、全特の事務局担当者が日本郵便執行役員に経費での購入を要望。注文期限が翌9月中旬に迫っており、よほどの事情があったとみられるが、日本郵便側は要望理由を詳しく聞くこともなく、1局あたり50冊、計2億円を気前よく支出していた。

さらに翌2019年には、全特会長から購入本数の倍増を求められ、これまた年4億円の予算をすんなりと認めている。この結果、2020年度までの3年間で計約51万冊、8億円超がつぎ込まれた。

本来は局長会が負担すべき政治活動の経費を日本郵便が肩代わりしていたことになる。物品や経費の目的外利用は明白で、動機によっては横領や着服が疑われる事態だ。金額の大きさから言えば、解雇されて刑事責任を問われる社員がいてもおかしくないレベルではないか。

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「支援者も郵便局の利用者」というおかしな理屈で正当化する日本郵便

日本郵便は郵便物数が減少していくなかで収支改善を図るため、土曜・翌日の郵便配達を取りやめ、過疎地の営業時間を縮める「サービス低下」を進めている。郵便料金も段階的に引き上げるコスト負担増を一般の利用者に課してきたわけだ。グループ内でも従業員の削減を進めているさなかだけに、8億円を超える野放図な経費支出には、厳しい態度で臨むはずだとの期待も出たが、それは見事に裏切られることになった。

日本郵便は自ら問題を矮小わいしょう化していく。

全特がカレンダーについて「支援者に配るように」と指示を出し、本来の「顧客サービス」とは異なる政治目的で配られた例があることは認めた。だが、「支援者も郵便局の利用者だ」というおかしな理屈を並べ立て、経費や物品の返金や賠償は求めないという結論を早々に下した。全特側が経費の支出をなぜ要望したのかという「動機」については調べようともせずに、調査を昨年末で打ち切った。