児童虐待の検挙件数は増加した

コロナ禍で増加した数字もある。それは児童虐待の検挙件数だ(図表2)。

警察庁「令和2年の犯罪情勢」のデータを基に株式会社マネネが作成。

失業や休業、またはリモートワークによって、コロナ前に比べ親が家にいる時間が増える一方で、子どもも休校や休園で家にいる時間が増えたというケースは多い。結果として親子が一緒に家で過ごす時間が長くなったことで、それが皮肉にもお互いのストレスにつながり、虐待を生んだと考えられる。

実際にはこの数字以上に虐待を受けている子どもがいると考えたほうがいい。家庭訪問や幼稚園・学校での行事がなくなったり、オンライン授業の導入によって、家族以外の大人が子どもの異変に気付く機会が減っているからだ。

コロナ禍によって、少子化が加速し、いまを生きる子どもたちも虐待で傷つけられる。ついついGDPや物価など、経済指標だけをみてコロナ禍の影響を理解しようとしがちだが、そこからだけでは把握できないほどの影響を日本経済は受けている。かつ、かなり尾を引きそうなことは容易に想像ができる。

出生数や婚姻数の減少はコロナだけが理由ではない

しかし、ここで1つ注意してほしい。この婚姻数や出生数の減少について、的外れな解説をする有識者が増えることを懸念している。

よく聞くのが「若者の○○離れ」という言葉に代表されるように、若者の価値観やライフスタイルの変化によって、結婚をしない若者や子どもを作らない夫婦が増えているという解説だ。しかし、国立社会保障・人口問題研究所「出生動向調査」のアンケートで、「いずれ結婚するつもり」と答えた未婚者(18〜34歳)の割合は1987年から2015年まで、それほど変わっていない。

なぜ結婚の意思があるのに結婚しないのか。その理由の1つこそが経済的な理由なのだ。男性の年収別有配偶率をみれば、年収が高くなれば高くなるほど配偶者を有する傾向があるのは明確だ。年収が600万円以上の30代男性は8割近くに配偶者がいる(図表3)。

労働政策研究・研修機構「若年者の就業状況・キャリア・職業能力開発の現状②」のデータを基に株式会社マネネが作成。

しかし、これまでみてきたように、平成の30年間で非正規雇用は増え、賃金はほぼ上がらないわけだから、婚姻数が下がり、結果として少子化が進むのは自明の理で、必ずしもコロナだけが原因ではないことは肝に銘じたい。