世の中のすべてが生きづらい場所だった

コロナ禍発生直後の不織布マスクの品不足が解消されていた2020年の冬、Bさんはだまされて5枚5000円相当のマスクを買ってしまい、周囲の人々にとがめられた。買い物とマスクが怖くなった。マスクを使い果たした後に次のマスクをなかなか買えず、ノーマスクで仕事場に出てひんしゅくを買ったが、口ごもって理由を説明できなかった。

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ワクチン接種のお知らせが届いたときは、書式が見るからに複雑で、コロナ禍の何もかもが嫌になった。こうした経験が、神真都Qの前身集団にBさんが親近感を覚えるきっかけになった。

「Bはイチベイが大好きです。しからないし嫌なことを言わないからだと」(Bさんの親族)

相談を寄せてくれたBさんの親族は、神真都Qを憎んでいる。だが、イチベイを大好きだと言うBさんの気持ちには理解を示している。Bさんにとっては物心がついてからずっと、世の中のすべてが生きづらい場所で、イチベイがいる神真都Qがやさしさを感じられる居場所になったのではないかと言う。

本人からのメールに添えられた絵文字

「Bは障害者ではないので、福祉の恩恵を受けられません。一人暮らしをやめるよう説得したくても、Bの母親の体調がよくないなど、今すぐには実家には戻せません。自分たち夫婦が引き取るのも、あらゆる面で負担が大きすぎます」

そう言っていたBさんの親族だが、今はBさんを呼び寄せる準備を始めている。Bさんは神真都Qに退会届を出していないが、現在は親族のサポートもあり、集団とは距離を置いている。「私の妻からもやさしくされるうち、神真都Qはどうでもよくなってきたようです。でも、いつかまた社会に出て行かなくてはいけません」

Bさんは筆者に、「(神真都Qの活動は)テレビを見ている感じでした」と、親族の方経由でメールを書き送ってきた。メールには星と虹と女性像の絵文字が添えられていた。彼女が神真都Qで味わっていたのは、自分を主人公にした、輝かしく自信に満ちた体験だったのかもしれない。