「本籍地を移すと、除籍された者に関する事項は転籍地の戸籍に引き継がれません(戸籍法施行規則第37条)。つまり自分の戸籍内にある離婚した相手についての記載や、親の戸籍内にある結婚前の自分についての記載が丸ごと消えるのです」(國部弁護士)
この他、分籍・入籍したり氏を変更した場合、コンピュータ化によって戸籍が改製された場合も離婚を示す記載は引き継がれない。ただ、転籍以外の手段は自分の意思だけで実現できなかったり、手続きのハードルが高いものが多い。一方、転籍は非常に簡単で、日本全国どこでも自由に転籍先を選べるし、手続きも現在の本籍地か転籍先のどちらかの役所に届けを出すだけでいい。誰でも容易にできることを考えると、転籍がもっとも現実的な手段だろう。
ただし、離婚歴を戸籍謄本から消すことはできても、原戸籍(改製される前の戸籍)や除籍謄本(戸籍内の全員が除籍されたり転籍して、戸籍簿から除籍簿に移された謄本)から完全に消すことはできない点に注意だ。
「遺産相続時には戸籍をさかのぼって親族・血縁関係を明らかにする必要があります。そのため役所は、原戸籍や除籍簿を保存して過去の身分関係を確かめられるようにしています。近年はプライバシー保護の観点から取得が制限されるようになりましたが、正当な理由があれば本人や法的関係者でなくても取得は可能。その意味では離婚を完璧に隠すことは不可能です」(同)
いつか何かの拍子でバレるかも、と不安な日々を過ごすなら、カミングアウトしたほうが精神的には楽かもしれない。“離婚歴ロンダリング”は、あくまでも最後の手段として位置づけておいたほうがいいだろう。