50代の中国人女性もいう。
「今の中国では中間層以上の人には大きな不満はありませんが、経済的に恵まれない人々の中には、富裕層を憎んでいる人もいます。でも、その不満は政府にはぶつけられない。ぶつけたら危険な目に遭いますから。そういうとき、芸能人や富裕層は恰好の標的となります。だから不満の捌け口として、彼らのSNSにひどい書き込みをする人も多いです。日本では芸能人に恨み辛みをぶつける人はそこまで多くないと思いますが、中国ではすごいですよ」
政権選択が存在しない中国ならではの事情
ゲーム規制などについても同様で、「保護者たちは子どものゲーム中毒に頭を抱えていました。だから、ゲーム時間について規制をかけることも歓迎です」という。
別の男性は「今のさまざまな規制について、日本では、そんなことまで政府が介入するのかと思う人がいるかもしれません。でも、中国では半ば強制的にでも規制しなければ歯止めがかからなくなることがあるのです」と、政府の政策を評価した。
その男性は続ける。
「もし、今のやり方に対して、国民からの反発が高まりすぎると政府が判断したら、ここまでのことはやりません。政府は世論をものすごく気にしていますから。ここは日本とは大きな違いだと思います。日本では、中国政府は国民のことなど考えず、何事も強引に推し進めるというイメージを持っている人がいるかもしれませんが、政府は、この政策は国民からある程度支持されるだろうとわかっているから、やっているのです。
もちろん、一時的に、どこかで痛みは伴います。塾の経営者や利害が大きい業界、一部の層にとってはけっこう大きな痛手でしょうが、社会全体のことを考えたら、致し方ないというか、むしろ歓迎だと半数以上の中国人は思っているのです」
選挙で政権を選択するという政治制度が実質的に存在しない中国では、かえって世論の支持を得られなければ、政府の正統性について国民から認められない、ということだ。
「第二の文革では?」に女性が大笑いしたワケ
さらに、数人の中国人に「日本では、今の富裕層や大企業をターゲットにしたやり方は『第二の文革(文化大革命)』だと報道する向きもあります」という話をしてみた。
文化大革命は1966年から1976年まで続いた大規模な権力闘争だ。毛沢東が主導し、紅衛兵と呼ばれる若者を扇動して、全国で文化財を破壊したり、知識人や、毛と対立する政治家を迫害したりして、数多くの犠牲者を出した。「共同富裕」も格差是正、とくに巨大IT企業や資産家をターゲットにすることから、日本のメディアには「文革を彷彿とするやり方」とする論調もあった。
ある女性はこういう。