中国ではグーグル検索やYouTubeは使えない

中国でもアメリカ発祥のSNS、TwitterやFacebookは規制の対象となっている。「金盾」(グレートファイヤーウォール)と呼ばれるネット検閲システムによって、グーグルなど海外の検索サイトも閲覧することはできない。

グーグルは2010年に中国政府の検閲方針に反対して中国から撤退、以後、Gmailを含めほとんどのサービスが使えない。グーグルのサービスであるYouTubeももちろん見られない。LINEも同様だ。

これらを見たいなら、先に述べたVPNを使用するしかない。筆者の知人の日本メディアの支局員や日系企業の駐在員は、日本に住む家族や友人と連絡を取る際、VPNを使用している。中国政府公認のものではないが、海外のSNSやニュースサイトにもアクセスでき、「使っていて特に問題はない」と言う。言うなれば「抜け穴」である。

中国にはロシア同様、独自のSNSも存在する。ウィーチャット(微信)やウェイボー(微博)がその代表格だ。中国国内での対話や議論のほかに、日本をはじめ海外在住の中国人が、これらを通じて中国国内に無数の情報を流し続けているというのも大きな特徴だ。

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「ネット空間は既存のメディアよりは信頼できる」

中国で留学生活を送ってきた日本人学生に聞くと、こんな答えが返ってきた。

「いつもネットで日本や世界のニュースは見ていましたよ。北京オリンピックで羽生結弦選手が中国で大人気になりましたけど、あれも日本のニュースを見たり、友人から情報が届いたり、翻訳機能とかを使って理解したりしているから、あのような現象になったのだと思います」
「さすがに中国政府に対しての批判は控えていますが、情報統制があるとはいってもネット空間は自由な部分もあって、テレビや新聞といった既存のメディアよりは信頼できます」

振り返れば、2021年7月、河南省を襲った集中豪雨で死者の数を少なく公表した中国当局に疑問の声が相次いだのはウィーチャットでの話だ。

また、女子テニス選手の彭帥ほうすいさんが、2021年11月2日、中国共産党元政治局常務委員の張高麗前副首相から性的な関係を強要されたと告白し、それが世界に拡散されたのもウェイボーを通じてである。

これらも「抜け穴」と言えるものだが、死者数ごまかしの指摘程度なら黙認しても、習近平や中国共産党への批判、あるいは政治的に敏感な話題などは、AI(人工知能)で自動検閲され、投稿してからすぐ削除される仕組みになっている。

彭帥さんの場合、その後、2週間失踪したが、国際的な関心事にならなければ失踪したままの状態だったかもしれない。