育休を延長する権利があっても、使えるとは限らない現状

保育所に入れなかった場合に育休を延長しようにも、会社によってはクビになりかねません。そうまでいかなくても上司や同僚に嫌な顔をされたり、閑職に追いやられたりすることもあるでしょうし、簡単には延長しづらいという問題もあります。もはや、終身雇用という時代でもないからです。法的には育休を延長する権利があるとしても、必ずしも育休をたっぷり取れるということはないでしょう。そして男性の育児休業率は低いままです。制度としてあるだけではなく、ぜひ男女ともに育休を取りやすい労働環境になることを願います。

また経済的に厳しく、育児休業給付金だけでは生活できないということもあるでしょう。育児休業給付金、いわゆる育休手当は「休業開始時賃金日額×支給日数×67%(ただし、育児休業の開始から6カ月経過後は50%)」で算出されます。しかも雇用保険から支払われるので、フリーランスや自営業だと育休手当はもらえません。

「ワンオペ育児」がメンタルヘルスによくないのは当然

以上のように経済的に働かざるを得ないとか、両親ともに働きたいとか、どちらも働いたほうがリスクヘッジになるという以外に、「産後うつ」の問題もあります。産後うつに限らず、両親が病気になってしまった場合は、市区町村を通じて保育所で子供を預かってくれますが、そもそも産後うつにならないほうがいいでしょう。

写真=iStock.com/kieferpix
※写真はイメージです

産後すぐの母親が「産後うつ」になるのはホルモンの急激な変化や過労のためで、およそ10人に1人の割合で起こります。また国立成育医療研究センターの調査によると、妊娠中から産後すぐの日本人女性は2015〜2016年の2年間で102人も自殺しているということがわかっています(国立成育医療研究センター「人口動態統計(死亡・出生・死産)から見る妊娠中・産後の死亡の現状」)。

この背景には、核家族で母親だけが子育てや家事を担うことが多いという現実があります。子供が小さいほど、親は寝たい時に眠れない、子供を一人にしておけないものですね。ワンオペ――つまり母親が一人で育児をせざるを得ず、睡眠時間を十分とれなかったり、一人の時間がなかったりということが、メンタルヘルスによくないことは容易に想像がつくでしょう。