90年代と比べて未成年の飲酒は大きく減少
私が高校生の頃は、未成年でも酒を飲むことがそれほど珍しくなかった。しかし最近は、若者が酒を飲まなくなっているという話も耳にする。先生、どうなのでしょうか?
「中高生の飲酒経験などを調査した結果によると、未成年の飲酒は減少傾向にあります(*5)。例えば、1996年と2014年の中学生男子を比較してみると、飲酒経験は73.5%から25.4%と約3分の1に減っています。中学生女子、高校生男女も同様の傾向にあります」(樋口さん)
社会全体の啓蒙活動の成果か、未成年の飲酒そのものは減っているようだ。しかし「減っている」というだけで、「完全になくなった」わけではない。
「昨今はアルコール全体の消費量が落ちているのと、スマホやゲームなどレジャーの多様化の影響もあり、未成年飲酒はかなり少なくなりました。コンビニで年齢確認が必須になるなど、入手しにくくなっていることも影響していると考えられます。しかし家にアルコールが置いてあることで手を出してしまう未成年も少なくありません。先ほどの調査結果を見ると未成年の酒の入手経路は自宅がトップになっています」(樋口さん)
「適量」を知らない若い人は特に要注意
20歳になった大学生や新社会人は、飲み会などを通じて慣れない酒を飲むことになる。
樋口さんは酒に慣れていない若い世代の飲み方について、こう注意喚起する。
「お酒に慣れていない若い世代は、自分の『適量』を知りません。そのため、いつのまにか適量を超えて飲んでしまうことも多い。またお酒に慣れていないため、アルコールの反応が高く出やすく、酔いやすい傾向にあります」(樋口さん)
飲む際の鉄則は、アルコール度数の低い酒を時間をかけて飲むこと、そして食事を食べながら飲むこと、そして水分もとること、だという。
「そして、一気飲みは危険です! 周りも勧めないことが大切です」(樋口さん)
若い世代と飲みたいという気持ちは分からなくはないが、ともするとそれはアルハラ(アルコールハラスメント)にもなりかねない。将来のある若い世代に酒の無理強いは禁物だ。
*1 “Hippocampal volume in adolescent-onset alcohol use disorders” M D De Bellis, D B Clark, S R Beers, P H Soloff, A M Boring, J Hall, A Kersh, M S Keshavan. Am J Psychiatry.2000;157(5):737-744.
*2 “Developmental changes in alcohol pharmacokinetics in rats” S J Kelly, D J Bonthius, J R West. Alcohol Clin Exp Res. 1987;11(3):281-286.
*3 “The impact of a family history of alcoholism on the relationship between age at onset of alcohol use and DSM-IV alcohol dependence: results from the National Longitudinal Alcohol Epidemiologic Survey” B F Grant. Alcohol Health Res World. 1998;22(2):144-147.
*4 WHO “Global status report on alcohol and health 2018”
*5 厚生労働科学研究「未成年者の喫煙・飲酒状況に関する実態調査研究」