夫婦になっても親密さを回避しようとする
シゾイドパーソナリティ障害の場合には、情感や表情も乏しく、冷たく無関心な傾向が目立つが、回避型愛着スタイルでは、そこまで冷たい印象ではなく、一見社交的な雰囲気を醸し出している場合もある。
しかし、つき合いはじめると、距離がなかなか縮まらず、プライベートなつき合いに至らなかったり、つき合い出しても、一向に親密度が深まらないことも多い。結婚とか、家庭をもつことにも消極的だ。基本、誰にも縛られない、マイペースな生き方を好む。
異性を、性的欲求を満たすためだけの道具のようにみなしている場合と、性的関心そのものが乏しく、恋人関係や夫婦関係になっても、ほとんど性的交渉をもたない場合もある。
もう一つの回避性のタイプ(回避型愛着スタイルとは異なるので、注意)は、本当は社交や親密な関係を求めているけれども、笑われたり、拒絶されたりするのが怖くて、自分から行動を起こせないタイプだ。正確には、回避性パーソナリティ(障害)と呼ばれる。
こちらは、心の奥底では求めているので、親密な関係になるまでのハードルは高いものの、いったん親密になると、相手に依存することも多い。回避性パーソナリティの場合、ベースにある愛着スタイルとしては、回避型ではなく、恐れ・回避型愛着スタイルが多いのも特徴だ。
「回避型愛着スタイル」は世界中で急増中
ヨーロッパのある研究では、若年成人の三割が回避型愛着スタイルを示したとの報告(※1)がある。その割合は増加傾向で、日本でも三割程度の大学生が回避型愛着スタイルに該当(※2)したというデータもある。その比率は、さらに高まり続けていると考えたほうがよさそうだ。
回避型愛着スタイルがASDと見紛われるケースも多い。ASDが大幅に増えている一因として、回避型愛着スタイルの子どもや大人を、ASDと診断してしまっている可能性がある。
回避型愛着スタイルは幼いころからの関わりによって、予防できると考えられる。できるだけ応答を活発にし、子どもの反応に、親や周囲の大人が豊かに反応することで、安定型の愛着を育むことを助けられるのだ。
成人となってしまった場合には、改善は難しくなるが、まったく不可能というわけではない。共感性や応答性の豊かな人が近くにいて、共感的な応答を活発に返すことで、愛着スタイルは徐々に変化し得る。専門の心理士が行うトレーニング・プログラムもある。
ただ、回避型愛着スタイルは、冷たくなる一方の世界に順応していくための結果であるとも考えられ、本人もあまり困っていない場合には、そもそも改善する必要があるのかということになる。
回避型愛着スタイルのほうが、明らかに悩みや苦しみは少なくて済むからだ。困るのは、本人というよりも、たまたまその人を好きになった恋人や、パートナーとなってしまった配偶者ということが多いのである。
(※1)Bakermans-Kranenburg & van IJzendoorn, “The first 10,000 Adult Attachment Interviews: distributions of adult attachment representations in clinical and non-clinical groups.” Attach Hum Dev. 2009 May;11(3):223-63.
(※2)松本姫歌、岡林睦美「青年期における愛着スタイルと母子イメージの関連 質問紙と母子画を用いての検討」広島大学心理学研究 第9号 2009