新電力の試算は「月額5万6000円」に急上昇
大手電力会社が「仕入れが難しくなってきている」と相次いで値上げに踏み切る中、新電力はどうなっているのか。筆者は試しに新電力のセインズベリー・エナジーが公開している料金シミュレーションサイトをチェックしてみた。利用者の住所や間取りなどを入力すると、定額制の料金プランが弾き出されるものだ。これが3月に入って月額370ポンド(約5万6000円)と、とんでもない上昇の仕方をしている。新電力は大手以上に電気の調達に苦戦しているようだ。
ロシアからのガス・原油がエネルギー輸入量の10%に過ぎない英国ですらこの状況だ。エネルギーの大半を輸入に頼る日本でも同じことが起きるのだろうか。
一方、これらエネルギー暴騰の恩恵を受けているのは、皮肉にも制裁を受けたロシアだ。欧米各国がロシア産原油を買わなくなることで原油の需給バランスが狂い、目下の原油価格は過去数年で最高値の水準にまで上がっている。ロシアはこれまで、原油価格が上がれば上がるほど、石油やガスといった資源の売却益で潤沢な歳入を維持してきた。
目下の状況では、英米がロシア産原油の輸入を止める一方で、ドイツを筆頭とする欧州各国は依然としてロシア産天然ガスを買い続けており、ロシアが制裁を喰らいながらもまだ強気な姿勢を取り続けられている要因となっている。
ただでさえ遠い日本へのフライトは15時間超に
英国の「制裁ブーメラン」は、回りまわって日本にも波及している。英政府がロシア機の上空通過禁止を打ち出した結果、日本―欧州間の航空便は大きく迂回する羽目になり、フライト時間がいつもより4時間多くかかっている。筆者がロンドンから日本に帰国する際は13時間を切っていたのが、今は17時間近くかかる計算になる。
これまで日欧間を結ぶ便は、全航路の距離のうち7割以上がロシア上空を飛んでいた。ところが、欧露、米露の航空路をめぐる制裁合戦の末、欧州各国から日本を目指す便がロシアを避けるルートを飛び始めた。コロナ禍でもともと需要が低下していることもあり、いまのところ運賃への顕著な跳ね返りはそれほどでもないが、今後、原油価格の急激な値上がりと相まって、燃油サーチャージの大幅増額は避けられない。
日本渡航断念の声は周囲からも聞こえてくる。3月に日本政府が入国措置を緩和したことで「訪日旅行にも光が見えた」と日本行きを待つ知人だったが、「こんな戦争の最中に旅行なんてできるわけがない。欧州は第2次世界大戦以降で最大の危機が起こっている」と言ってはばからない。