フューチャーセンターの可能性

――プロジェクト結は、プロボノ集団として活動を続けていますが、その活動自体とフューチャーセンターには、何かつながりはありますか?

中川:そういえば、プロジェクト結を立ち上げたときも、現地に始めて入った後に方向転換を決めたときも、大事な話し合いは、いつもここKDIのフューチャーセンターでやりました。荻原さんの存在に加えて、ここがフューチャーセンターだったということに、大きな意味があったような気がします。

長尾:確かに、そうですね。フューチャーセンターという場所というか、そこにファシリテーションに長けた人が何人もいるということが、「最後にはなんとかなるよな」という安心感を生んでいたような気がします。その場にいる人たちの経験知が、来る人の期待感や求心力になって、人が集まっていたのだと思います。やはり、フューチャーセンターには、そこに頼りになる誰かがいる、ということが非常に重要ですね。

――フューチャーセンターの今後の可能性について何かありましたら。

長尾:東北にいる人が感じる現地ニーズと、東京にいる人の持つリソースが、うまく噛み合っていません。すべてとは言いませんが、そう感じることが本当に多いんです。広告代理店や企業が間に入って、支援を目的にしたCSR活動と標榜しつつ、実態は販促活動として「企業の商品をプレゼントとして仮設住宅に届ける」ようなイベントがかなりあるんです。イベントをカメラに写すのが目的で、企業の偉いさんがやってきて、子供たちに「おいしい!ありがとう!」と言わせて必死にカメラに撮って帰ります。ひどいときは、後片付けもしないで帰ります。

中川:そういう意味では、残念ながら現地の人たちが違和感を持つだろう企画をめにすることもあります。

――企業は経営者が気に入る企画書を作ることに必死だから、現地目線ではなく、どうしても会議室目線の企画になるんですね。

長尾:もちろん、非営利セクターからの発信も少ないことにも問題があるんです。これを正しいプロセスに変えていくためにも、現地ニーズと企業リソースのいい意味でのマッチングを行うための、フューチャーセンターが必要になると思います。

――説得力がありますね。このような、「現地で感じたこと」をしっかりと残して、社会全体に伝えていくことが、とても大事だと思いますよ。

長尾:毎日、「現地から愛を込めて」という速報メールを東京にいるプロボノの仲間に送っています。どんなに疲れていても、必ず毎晩遅くまでかけて書いています。東京の人がやったことが、どう現地につながったかを伝える必要があるからです。

――長尾さん、中川さん、ありがとうございました。東北復興というエクストリームケースで、どのような対話の場が必要とされているのか、そこにフューチャーセンターはどう貢献し得るのか、ということに多くの気づきをいただきました。一緒に、フューチャーセンターを創っていきましょう。