「ノネコを生かそうという気持ちがゼロです」

「とにかく1週間の期限なんて短すぎる」

と、前出の齊藤氏も憤る。齊藤氏はノネコ管理計画がスタートした当初から譲渡認定人(奄美大島で猫を引き受ける資格を得た人)として、捕獲された奄美のノネコを保護する活動を継続している。

「どの譲渡認定人も皆、家庭や仕事を抱えている。どうやっても1週間以内に陸のつながっていない奄美大島にノネコを迎えに行けるわけがないでしょう。1週間の期限がきて誰も引き取らなければ安楽殺処分費用が約3万円が支払われて殺処分されるのに対し、引き取りたいと手を挙げた人がいたら、(譲渡可能期間を超えた1週間後から)1日330円の飼育費代が発生します」

チリも積もればで、その飼育費代が1カ月数千円におよぶことがあるという。「ノネコを生かそうという気持ちがゼロです」と、齊藤氏(※)。

※「ノネコ管理計画」の詳細については、獣医師の齊藤朋子さんのインタビュー動画を筆者のYouTubeチャンネルに掲載している。

それでも奄美大島で一度も殺処分が行われていないワケ

同じく譲渡認定人の服部由佳氏は、もともと保健所の猫の里親ボランティアをしていた。その延長で奄美大島の猫を殺処分から守りたい、しかし個人で多くの猫を引き取ることには限界があると考え、およそ2年前に譲渡型猫カフェ「ケット・シー」を神奈川県横浜市に立ち上げた。クラウド・ファンディングを通して500人以上の支持を得て、さらに自らも500万円の借金を背負っての開業である。

撮影=笹井恵里子
奄美大島で捕獲され、保護猫カフェ「ケット・シー」に移ってきたノネコ

現在は奄美大島で猫が捕獲されると、齊藤氏、服部氏らが中心となって引き取りの手を挙げ、ボランティアが協力して奄美大島から羽田空港へ、そして検査や不妊去勢手術を行い、ボランティア宅での待機期間を経て、ケット・シーに“デビュー”し、「里親との出会い」を待つ(※)。

※譲渡型の猫カフェ「ケット・シー」の様子は、筆者のYouTubeチャンネルでも紹介している。

撮影=笹井恵里子
奄美大島のノネコ管理計画で捕獲された猫「まめぼっくり」とボランティアの大学生・佐藤七恵さん

こういった努力があったから、奄美大島の猫はこれまで一度も殺処分が行われていない。

「『奄美大島で殺処分は行われていません』という言葉を見聞きするたびに奄美大島でも譲渡認定人を増やす努力をしてほしい、と思います」

服部氏は何度もそう訴える。

「奄美大島には捕獲された猫を引き受ける受け皿、獣医師会や動物愛護団体がありません。だからケット・シーを始めました。でも本当は、この近くの地域の猫も救っていきたいんです」