「聖隷クリストファーの逆転劇は精緻な走塁練習のたまもの」は本当か

この試合のイニングスコアはこうだ。

聖隷 000 001 003=4
中京 002 100 000=3

2点差を追いかける9回表、聖隷クリストファーは1死2塁の場面で、投手悪送球と走塁妨害から1点を奪ったのをきっかけにこの回に一気に3点を入れ逆転に成功。4-3で岐阜大会の優勝チームを下した。

この試合、センバツ高校野球の主催者である毎日新聞は「聖隷クリストファーの逆転劇は、精緻な走塁練習のたまものだ」というタイトルで以下のように伝えている。

2点を追う九回1死二塁。代走に送られたA選手(2年)は、中京の投手のけん制ミスに乗じて三塁へ。さらに次の打者がゴロを打ったと同時に飛び出した。打球は投手の前に転がり、時既に遅し。三本間(三塁とホームベースの間)で挟まれた。

「打者走者が三塁に到達するまでは粘ろう」とA選手は逃げ回った。ただ、追って来る相手投手が味方へボールを投げた瞬間、三塁線上にいたままなのを見逃さなかった。A選手はすぐに走って相手のグラブに接触。走路をブロックされたと審判にアピールし、走塁妨害が成立した。生還が認められ、なおも1死二塁の好機。二つの押し出し四球も出て、逆転に成功した。

走者を置いたノックで何度も挟撃を想定し、練習してきた。A選手は「追って来る選手の体やグラブの位置をよく見るようになった」と話す。上村敏正監督は「積み重ねてきたことが大事な場面でポンと出た。そういうことじゃないですかね」と、まんざらでもない表情でつぶやいた。

※プレジデントオンライン編集部註:毎日新聞の記事ではA選手は実名。

公式戦で審判が走塁妨害と判定した以上、それは守備側のミスなのだろう。ただ、記事を読む限り、日々の練習から相手の守備体型のスキを見て「走塁妨害」を狙っていた、とも考えられる。

野球は9イニングで相手チームより多く得点を入れたほうが勝ちというゲームだ。失点を最少に抑える一方、得点をたくさんあげる。練習で、打撃や守備のスキルをあげるのではなく、仮に走塁妨害を狙うことに時間を割いていたとすると……高校野球の本質とは違うのではと、首を傾げる人もいるに違いない。

写真=iStock.com/KS BioGeo
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