「当選確実」だった聖隷クリストファーが一転、落ちたワケ
ひとつの“嘘”をつくことで、さらに“嘘”をつかないといけなくなる場合がある。作り上げたストーリーのつじつまを合わせるためだ。
1月28日に第94回選抜高校野球の出場校が決定した。「2枠」あった東海地区(静岡、愛知、岐阜、三重)では、昨秋に実施された東海大会の準優勝校である聖隷クリストファー(静岡)が選考されなかったことが波紋を広げている。
ネット上では高校野球ファンや地元静岡県民などがこの選考はありえないと怒りを表明した。背景に何があるのか。取材を進めていくと、今回の選考はある意味“妥当”ではないかと考える層がいることがわかった。
まずは東海大会の結果を振り返りたい。大会には地元の県大会を勝ち上がった2~3校が出場し、全12校がトーナメント方式で戦う。決勝は、静岡県勢の対戦となり、聖隷クリストファーは日大三島に3-6で敗れた(日大三島は選考された)。
聖隷は敗れたものの、センバツ出場は確実とみられていた。しかし、選ばれたのは準決勝で日大三島に5-10で敗れた大垣日大(岐阜)だった。
この選考理由について高野連東海地区の鬼嶋一司選抜選考委員長はこう説明している。
「聖隷クリストファーは頭とハートを使う高校生らしい野球で、東海大会の2回戦(岐阜1位の中京と対戦)、準決勝は見事な逆転劇だった。個人の力量に勝る大垣日大(岐阜2位)か、粘り強さの聖隷クリストファー(静岡2位)かで賛否が分かれたが、投打に勝る大垣日大を推薦校とした。大垣日大は前評判の高かった静岡高校(静岡3位)の吉田投手を打ち崩した連打は見事だった。2回戦では、優勝候補の一角だった愛知1位の享栄高校(愛知1位)とレベルの高い見ごたえのある戦いを見せた」
NHKの高校野球解説者としても知られた鬼嶋選考委員長は聖隷クリストファーの特徴について「頭とハートを使う高校生らしい野球」と表現した。攻守に頭脳的で気持ちのこもったプレーをするチームと評価していると読み取れるが、実は別の意味が含まれる可能性があることが取材で判明した。
この選考に東海地区の強豪校でコーチを務める人物は大変驚いたという。
「もう、たまげましたね。決勝で(聖隷が)コールド負けに近い状態なら選考から外れた可能性はありますが、今回は静岡の2校で疑いのない状況だったと思います。過去に愛知2校が選ばれたこともありますし、地域性を加味したとも思えません。ただ高野連としても、めちゃめちゃなことはしないはずなんです」