無意識に背負った罪悪感に気づいたきっかけ

そうこうするうちに、自分が願っていた通りに祖母が死んだことにもショックを受け、「自分ののろいが祖母を死なせた」という非合理な罪悪感にとらわれます。ひたすら勉強することもバカらしくなりました。目標を失った彼女は空虚な日々の中を漂うことになり、そんな状態のまま順調に進学してしまったのです。

セラピーをはじめて少し経った頃、Aさんは大学でのポストを断念し、某製薬会社の研究室に入りました。それから5年、今の彼女は窃盗癖からも摂食障害からも解放されています。研究生活に戻れて張り切ったからだろうと思う人もいるでしょうが、それだけでないことは、彼女とともに多くの時間を過ごしてきた私が知っています。新しい会社の環境は、Aさんに充分なストレスを与えましたから。

改善の理由はほかにあって、それは彼女が祖母の死に伴って取り込んだ“むさぼりの心”を手放せたからだと思います。それを手放せたのは、私に話せた(無意識を意識化できた)からです。その証拠に、今ではAさんと母親との関係も改善しています。

多くの人が親の身勝手に耐えながら生きている

「毒親のせいで、私はこうなった」などと親を責めていても、こうした変化は起こりません。親を責める必要があるとしたら、それは反対にあなたが親たちに“理由のない罪悪感”を抱いているからかもしれないのです。

人間はみなそれなりに身勝手なものですから、あなたの親だけが身勝手から逃れられるわけはありません。多くの人が、親の身勝手に耐えながら生きている。ある程度は断念して「しょうがないな」と思いながら、親と付き合っているのです。

「こんなのは不当だ」「こんな親のもとに生まれた自分は損をしている」「もっとよい親の子に生まれれば、もっと自分の人生もうまくいったはず」と言い(思い)はじめると、いつまでもそのことと戦っていなければいけません。その親のもとに生まれたことは変えられないのに(その親のもとに生まれたからこそ、今のあなたがいるのですから)、そこにいつまでもパワーを割いていると、本当に戦うべきところで戦えないのではないかと心配です。