雇用環境の悪化で消費者の買い控えが起きている
中小企業の業況悪化は、雇用・所得環境の先行き懸念を高める。すでに中国では今後の雇用環境が悪化すると警戒を強め、節約を重視する消費者が増えている。それは12月の主要経済指標から確認できる。同月の社会消費品小売総額(小売売上高)は前年同月比で1.7%増だった。増加率は前月から低下した。
また、12月の消費者物価指数(CPI)の上昇率は同1.5%上昇したが、前月比では0.3%下落した。世界的に物価上昇圧力が高まる状況下、中国のCPI上昇率の鈍さは際立っている。消費者心理の冷え込みは深刻と考えられる。
一部の地域では、ゼロコロナ対策によって医療サービスへのアクセスが難しいまでに徹底した都市封鎖が実行されていると聞く。その状況下、感染に対する人々の恐怖心理は高まる。それに加えて、中国では農村戸籍と都市戸籍の違いに起因する経済格差も拡大している。少子化問題も重なり、年金など社会保障の持続性への不安は高まっているだろう。
コロナ禍によって、先々、あるいは老後の生活に備えて貯蓄を優先せざるを得ない人が急速に増えている。不動産バブル崩壊も、将来への予備的動機を強める要因だ。12月から1月にかけて発表された一連の経済指標から、中国経済の実態の厳しさがうかがわれる。
中小企業の救済策を相次いで打ち出すが…
経済の減速を食い止めるために、共産党政権は財政支出の拡大と金融政策の緩和を余儀なくされるだろう。ただし、経済全体で資本の効率性が低下しているため、減速の食い止めは容易ではない。コロナ禍が発生して以降、共産党政権は中小企業の資金繰りなどを支援するために積極的に対策を打った。
昨年9月、中小企業に低利での借り換えを促すために中国人民銀行が3000億元(約5兆円)の資金枠を設けたのはその一例だ。その背景には、大手銀行が、信用リスクが相対的に低い国有、国営企業への融資を優先するという構造的な問題がある。
しかし、共産党政権の景気下支え策は中小企業の景況感の改善につながらなかった。そのため昨年12月の中央経済工作会議では中小企業を念頭に置いたとみられる減税措置が発表された。同月に中国人民銀行は想定外に利下げを実施した。1月には追加利下げが実施された。それにもかかわらず財新の製造業PMIが50を下回った。共産党政権は想定を上回る景気減速の鮮明化にかなりの危機感を強めているだろう。