企業は相談の半数を「放置」「無視」している

この調査によれば、労働者がパワハラを受けている(またはパワハラがあった可能性がある)ことを知ったあとの勤務先の対応について、なんと「特に何もしなかった」が47.1%に上っており、1位を占めている。ほとんど半分だ。

ちなみにほかの回答項目(複数回答あり)は「あなたの要望を聞いたり、問題を解決するために相談に乗ってくれた」(28.0%)、「あなたに事実確認のためのヒアリングを行った」(21.4%)、「行為者に事実確認を行った」(9.7%)などである。

事例によっては、被害内容がグレーゾーンに当たり、パワハラとまでは判断されないこともあるだろう(もちろん、企業側が被害を過小評価することは十分にあり得る)。しかし、相談者、行為者にヒアリングをするという、いずれも被害事実がパワハラであったかどうかを判断する手前のプロセスですら、それぞれ2割、1割程度しか行われていない。あろうことか相談者の要望を聞くという、ごく最低限の対応すら3割に満たない。約5割は「放置」や「無視」をされ、初歩的な段階で闇に葬られてしまうのだ。

筆者も相談で経験したことがあるが、加害者や関係者、会社で事実関係について口裏合わせをされてしまったり、証拠を改ざん・隠蔽いんぺいされたりというパターンも少なくない。

このように厚労省の調査を見る限り、企業の相談窓口の実態は、信頼して利用できるとは到底言えないのが現状だ。

会社がパワハラ相談を無視する実態については、私の著書『大人のいじめ』の一部を紹介した記事「たった1年で30人が離職…「黒字転換」した介護施設で起きていた“陰湿ないじめ”の手口」も読んでみてほしい。

コミュニケーション強化でパワハラは解決するか

ハラスメント「発生後」の相談窓口の対応に不安がある一方で、企業のハラスメント「防止」にはどのような課題があるのだろうか。

前述の経団連のハラスメント調査では、ハラスメント防止・対応の課題についても加盟企業に尋ねている。1位は63.8%が「コミュニケーション不足」だった。ついで、「世代間ギャップ、価値観の違い」(55.8%)、「ハラスメントへの理解不足(管理職)」(45.3%)と続く。大まかには、もっと社内のコミュニケーションや考え方、周知啓発を増やすことで、パワハラが減ると認識されているようだ。